「怖い話」克服②-冥界行バス-

 

彼は、夜になると、むくりと起きて、身支度を整えて、夜の街に繰り出す。もちろん彼の様な人間が、まっとうな店に足をはこぶことはない。

かれは帰りがけにスーパーによった。半額弁当、それが彼のひと時の楽しみだった。かなわぬ夢の周りを回るように黒く小さい人々が売り場の周りをまわっている。群がる人々はどうしてこんなにも疲れているのだろうか。

果てた悲しき夢のあとには、また同じ幻がやってくるのだ。いつまでも、いつまでもたとえ年老いたとしてもそれはやむことはない。世の中の息苦しさと、自分自身の息苦しさの挟み撃ちにあい、逃げ場のない隅の日陰に後ろ指を指されながら沈殿していく、

今と変わらないしかし、終わりの風景、そんな未来に彼は恐怖し、むなしくなった。そして一刻も早く家に帰りたくなったのだ。
人間のいないところへ、傷ついた人々のいない、傷つける者のいない安住の地へ。憎み愛してやまない仲間たちそれに背を向ける。

コンビニで時間をつぶした後、
20円引きのパンを食べながら、公園まで差し掛かった。公園のベンチに人らしきものがうずくまっている。見間違いだろう。でなければぞっとしない。小さいころムジナについての話をよく聞いていた彼は、わかっていてもこういう時、妙な不安を感じてしまうのだった。

そそくさと離れようとしたが、どうも様子がおかしい。ベンチに座っている人の揺れ方がどうも尋常じゃない。まるで、フンフンフンとどこかのバスケ漫画のような揺れ方なのだ。滑稽な目が慣れるにつれて、サラリーマン風の中年男性であることが分かった。

みたんだよ。みたんだ。おれは・・・・
目が慣れてきたおかげで、よく見ると周りに水を飲んでもよっパラっていそうな連中がたむろしているのに気が付いた。公園の住人、見知った顔もいるようだ。なぜ男にはきづいて彼らにはきづかなかったのだろうか。

とりあえず安全らしい。彼は紳士らしく半額の弁当を男にわたし、話を聞くことにした。
今日一日あれだけ人を嫌悪していたのに、今は妙に人と関わりたい気持ちになっていたのだった。

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