「怖い話」克服⑤-冥界行バスー

 

その彼が目の前にいたのです。私はなんとい言っていいのかわかりませんでした。
しかし彼は、私を温かく迎えてくれました。彼も、他の住人も、謎のバスに乗ってこの町に来たそうです。そしてここで何もかも忘れてこの町で幸せに暮らしていると。
私は何も言えなかった。謝罪も、後悔の言葉も、絶望の言葉も、何も言えなかった。

しかし、その町で私は幸せでした。失った親友と再会し、そのうち妻子もでき、仕事も見つけ、気が付けば私の片腕もなくなっていました。まあ片腕なので仕事は大変ですが。

週末は親友の一家とバーベーキューなんぞをして盛り上がりましたし、本当に楽しかった。
友は私のことを許してくれたのです。醜い人間以下の生まれながらの害悪でしかない私に生きていいと言ってくれた、そう思うのです。

でも因果応報というんですかね、たいがい自分自身の行いの悪さからダメになってしまうものなんですかね。

3年程たったある日、仕事も軌道に乗り始めた矢先に、私のミスで大きなクレームが発生してしまいました。取引先、ふふ、意外でしょう、そんな不思議な町でも、お金も会社もあるんですよ。
取引先に謝罪してへとへとになりながら家に帰った私は、まあお気づきかもしれないが、私は彼の娘を誘惑してしまったのです。ええこんな私がかって?、本当ですよとんだ阿婆擦れでしたよ。へへ

私が必死になって屈辱と絶望にまみれているときに、彼が何をしているのか、私は知っていました。だって、私の妻もまだ帰ってないからです。習い事とかなんとか口実をつけてね。でも二人が影でなにをしているのかは前から薄々感づいていたんですよ。復習されて当然とはいえ、それじゃあ結局何もかも彼のが上というわけですよ。

そんな不公平でくそみたいな運命、逆立ちしたって彼にはかなわない運命なんですよ。だから彼の一番大切な物を奪ってやったのです。へへ、あのときと同じでした、それを帰ってきた彼と妻にに目撃されてしまったんですよ。

わたしはとっさに謝ろうとしました。今まで実は彼に一度も謝っていなかったことに私は気が付いていました。幸せが崩れてしまうような気がしましてね。でもいまさらそんなことを出来る状況ではなくしてしまったんです。

彼の顔が青ざめているのを感じました。やはり恨みというのは早々忘れられるものじゃあありません。ましてや2回目ですからね。
でもせめて謝ればよかったんです。できなかった。後ろめたい気持ちがいっぱいで、気が付いたら彼を口汚くののしっていました。お前が根性なしなのが悪いんだ。お前が上司や仲間たちとうまくやれなかったのが悪いんだ、その上親切にしてやった俺の妻と不倫をするとはなんてやつだとね。

友は悲しそうな顔をしていました。私は興奮して少し得意になりましたよ。でもね妻のやつが言ったんです。あなたの誕生日の相談を二人でしていたのにとね。

私は、思わずはっとしましたよ。ああ、そうなんですよ、言われて初めて気がつくものですねその次の日が私の誕生日だったのです。なあに信じるものですか、女というのは言い訳ばかりうまいんですよ、

ええ、信じませんよ・・・・ただ私はそういって青くなって、しどろもどろになってしまったんです。だってそんなこと、認められませんよ、じゃあ私はいったいなんなんですか。

そして私は逃げ出したんです。

 

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