友人が中学の時修学旅行で体験した話。
学校が予約した宿の一部屋に、男子グループ数名で宿泊し、夜は土産を買ったり、適当に暴れたり、はやりの漫画を読んだり、地方テレビを見たり、カードゲームをやったり、いろいろ楽しんだ挙句、怖い話大会になったわけ。
友人は仮にKYとしておこう。なぜかって? ムードメーカー的良いヤツなんだけど、調子に乗りすぎて人をおちょくる癖があったんだ。
その日はドッキリとして、旅館の押し入れに持参したお札をはっておいて、自分の怪談と同時に、それを取り出してびっくりさせようという魂胆だった。
KYの出番の前に、他の男子Xの話を一つ書いておこう。
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「恐怖イカ人間!!」
イカ人間がやってくる
イカ人間がやってくる。
あいつらはスルメじゃない
なんでもペロリ!
これがガラガラヘビならぬ、イカ人間のテーマソングだ。というかパクリだけど。しかしイカ人間は本当の怪談だ。
イカ人間は、もともとはある市町村のゆるキャラだったんだ。正確にはその試作品の一つだった。そしてなんか不気味だということで、あっさりと企画は没にされて、試作品イカ人間人形は、ゴミ捨て場に捨てられた。
しかしその日、偶然社会から捨てられた男性が通りかかったときに、その二つの波動が融合して、イカ人形が男性を食べてできたのがイカ人間だ。
上半身はイカ(モンゴイカかスルメイカらしい)、下半身は人間、魔人イカ人間。
このイカ人間は、人を食べる。どうやって食べるかというと、上半身のイカの部分だけが宙に浮き、口から人間の上半身を丸呑みにする。するとまたイカが上半身になり、人間の足が下半身になる。
イカ人間は、こうして体をのりかえているんだ。でも彼はいつも同じイカ人間であることには変わりがなく、最初の見捨てられた負のエネルギーを忘れてはいないんだ。
そんなやつはいるわけがないと思うだろう?
でも彼はひき子さんみたいに、視界が悪い日や人に見つかりにくい場所ばかりを歩いているんだ。そして夢もその一つだ。
君たちも気を付けた方がいい。イカ人間は一度目撃してしまうが最後、どこからでも君を食べようとしてくる。
イカ人間に食われたら、君がイカ人間になってしまうんだ。いやあるいは逆かな。
イカ人間がやってくる
イカ人間がやってくる。
あいつらはスルメじゃない
なんでもペロリ
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次はKYの話だ。
「旅館のお札」
これは知人のWさんのいとこが、実際に体験した話だ。
彼はその日、旅行で旅館にとまったのだけど、旅先にもかかわらず、コンビニ食品で豪遊しながらテレビを見ていた。そういうのはビジネスホテルやれ。
テレビの内容は、怖い話で、旅館の押し入れにお札が張られているというありがちな内容だった。彼はそういうものにビビるような人間ではなかったが、興味本位で、旅館の押入れをさがしてみたら、あった白いお札だ。
Wさんは、その晩高熱にうなされはじめ、それは一週間続いたらしい。
「それただのインフルエンザだろ!」
「いやそうじゃない、実はこの話には続きがあるんだ。この話をきいたり、話したりすると、怪異をひきつけてしまうといわれているんだ。現にいま、ほらこの押入れを探すと、ほら!」
KYは、そういって、あらかじめ押し入れに隠しておいたお札を取り出した。これでみんながビビるとおもったのか、それとも受けると思ったのか、俺は知らない。
しかし、反応は少し受けただけで。皆そんなに驚かなかった。
「またそういうことするんだよな。まったくKYは」
「脅かすなよな」
KYは、せっかくお札まで用意したのに不満だったが、心は広いやつなので、すぐにわすれて、怪談に熱中し出した。
でも1時間くらい経ったとき、おかしなことが起きた。男子の一人Vとしておこう。そのVの話す番で彼は震えながら話し始めた。
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「旅館のお札」
俺が本で読んだ話はKYと同じだ。
というよりも、KYの行動事態と同じだ。ある少年が旅館でいたずらの、お札を取り出すと、それは黒くなっている。
というかたぶんテレビの番組でやっていたやつだ。
だからぱくりになること思い、これは話さないでいるつもりだった。でもかすかな違和感に気が付いて今はなすことにした。
それはお札が黒いってことだ。押入れから取り出したお札は、黒いお札なはずだ。でもKYはもしかして白いお札だと勘違いしていないかと思って一応話をした。
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KYは意味が解らなかった。
お札が黒か白か、そんなことはどうでもいいじゃないかと。それで気になって、お札を押入れからとりだして調べた。
するとそれは黒かった。さっきまでは白かった気がしたのだが。
その後、KYは、Wさんのいとこにお札の色を聞いてみた。すると彼は黒かったと話した。さらに、なんとかテレビ番組の件も調べてみたが、そのタイトルは黒いお札だった。
俺はつまりどっちなのか、KYにきいた。
すると「みんな黒だというから黒なんだろうな。俺の勘違いだよ、白いお札が黒くなるわけないだろう?」そう言っていた。