「怖い話」下駄箱の幽霊


 

「下駄箱の幽霊」

これは俺が小学生の時の話。
やたら教訓めいた話だし、幽霊も出たのかはわからないけど、
俺としては、印象深い体験だった。

 

その日俺は、放課後に、校庭で遊んでいた。ドッジボールとか、サッカーとか。
今は時間の制限とか色々あるって聞いているが、俺が子供のころは、暗くなるまでは、先生にも何も言われなかった。

で、その時、休憩がてらに怖い話を聴いたんだ。それは学校の下駄箱に幽霊が出るという話だった。

でも下駄箱なんて、別に放課後でさえ入れるし、人影があったって怖くもない、幽霊かもわからない。というより、もし生徒が見たとしても、まだ時間帯的に幽霊と認められないだろう。

俺がそう突っ込むと、たかし、俺のそこそこ仲良かった友達が、もっと詳しい話を、聞いてもいないのに、話してくれた。

なんでも昔、下駄箱で、こけて、頭を打って、死んだ男の子がいるんだと。
いや全然詳しくないな。小学生だもんな、話も上手くないし、もう細かいことは覚えていなんだ。

俺達はその時、今思いだして後悔してるが、「間抜けなやつだなあ」そういって笑い転げたんだ。なにがそんなに楽しかったのか、本当に些細な事でも、あのころは笑えたんだ。説明しろって言われてもこれは難しいけどな。

 

しかし、たかしのやつ、元気でやってるかな。

不思議だよな、小学校に6年も通えば、かなりの人と出会っているはずなのに、大人になった時にすぐに連絡取れる人間なんて、せいぜい2,3人いれば多いほうなんだから。
みんなどこで何やってんだよってね。

ところでこの話パソコンで書きこんでるんだけど、キーボードが古いんだよ。話って書こうとするたびに、藩士って変換されるんだ。どこの武士だよ。

スマン。話がそれたわ。それでさ、俺達は、暗くなるまで、サッカーしたわけ。
あと、仮面ライダー龍騎ごっことかな。たかしのやつはG3が、好きだと言っていた。けいすけは、いや俺はリック・ドムが好きだとか、わけのわからないことを言っていたが、今思うと作品が違う。かくいう俺は、スーパーミルクちゃんが好きだったが、誰にも言えなかった。

この三人で帰るときは、校庭の裏側に回って、学童とかある方から帰るんだよ。学童に通っているやつらともよく遊んだよ。
で、そっちから帰ると、下駄箱が近いんだな。手品好きな校長が趣味でかっている鯉が住んでいる池とかもあるし、校庭側とちがって狭いからな。

昔その近くに、学校をかこっているフェンスはじの方に、ザクロが自生していて、勝手に昼休みに食べていたんだけど、よくよく考えたら、あれ校長が育ててたのかもしれないな。

 

でザクロはどうでもよくて、そこにさ、下駄箱にさ、人影、いや人がいたんだよ。しかも立ってない、寝てる、というよりうずくまっている、こけてる。

俺達は、怖かったけれど、その人に近づいたんだよ。人が倒れているなら、結局助けるしかない。例の話が頭をよぎっても、人が倒れていたら、さすがにね。

恐る恐る少しずつ近づいて、確認すると、そいつは、普通の子どもだった。頭から血を出して、いかにもぐったりして、意識を失っているようで、傷は深そうだった。

特に知らない生徒だが、とにかく、声をかけた。がやはり返事はなかった。俺がその子供を介抱する役目になって、たかし、けいすけ、は先生を呼びに行った。

俺はさ、怖かったけれど、正直退屈だった。でもやはり怖くて、何か特別な光景にドギマギしていた。まさか俺が見ている前で死なないよな?なんて考えていた。冷静で醒めた自分と、心配性な自分、そういう二人の自分を感じる時ってあるよな。しかもこんな時に誰も通らないんだ。

少しして、眼の端で、何かが動いた。カナヘビだった。下駄箱の傘入れの隙間に逃げ込んだところを、俺は見逃さなかった、そしてそっちへ気を取られた瞬間、鈍い音が頭に響いて、俺は気を失った。

気が付いたら、保健室のベッドで俺は寝ていた。
周りには、先生と、たかし、けいすけ、それに心配して駆け付けた母親がいた。

彼らの話によると、俺はその日、サッカーで転んで、頭をうって、しばらく意識を失っていたらしい。
心配するみんなに、感謝しつつ、俺もとんだまぬけだなと、そう笑いかけたが、しかしやめておいた。

おきた時かもしれないし、倒れた時かもしれないが、たしかに聞こえた気がしたからだ、耳の後ろあたりからさ

「まぬけでわるかったな」てね。

俺は心の中で謝罪したよ。

 

これで話は終わり、その後は何もない。全然怖くないだろう?
今はすっかり大人になって、現実を生きている俺からすれば、普段の生活や金欠のほうがはるかに怖い。饅頭怖い、饅頭怖い、そういって、タヌキに饅頭たくさんもらう、藩士を子供のころ読んだっけ。ああ、お金怖い、お金怖い、金がほしい、なんてな。

やつらに会うのに、少しは見栄、張らなきゃいけないしな。
今度、あの二人に会うんだよ、結局数年ぶりなんだな。でもあいつら変わってなきゃいいが、まあ変わっていてもいいさ。

 

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