・どんな本か-金貨と怪奇・現実と幻想をめぐる怪奇譚
舞台はロンドン、文士を気取っている実質ニートのダイスン氏とフィリップ氏が伝説のティベリウス金貨を偶然手に入れたことから、それを狙う謎の3人の男女と、彼らによって語られる怪しい危険と怪奇の物語に巻き込まれていく。
フランシスコ・デ・ゴヤ作「魔女の集会」1797-1978年
・RAIMEI的ハイライト-妖精とは進化に取り残された異形の種族
作中でのティベリウス金貨とは半人半羊神(パン)の描かれた金貨で、所有者に災悪を招くものとされています。パン神は若者を誘惑する淫楽の主催者・超自然的存在を語るこの作品の象徴です。
作中では色々な怪奇が語られますが、自分が引かれたのは、「妖精や矮人とは、美しい姿でえがかれた単なる伝説ではなく、今なお山奥に存在しており、その正体は進化に取り残された故に人間には失われた古代の力を宿している、ナメクジの様な異形の種族である」という仮説を持ち、山奥での女性の失踪事件を追っている老教授の話です。
・感想
オカルトや考古学好きな人は面白いと思います。文章は風景等の描写がかなり細かく独特の世界に引き込まれていきます。一つ一つの話は独立していますが、すべてを読み終えると全体を理解できるような構成になっており、2度3度読みたくなる本です。