【読書感想】「前世療法 米国精神科医が体験した輪廻転生の神秘」

 

こんにちはRAIMEIです。

今回は、「前世療法 米国精神科医が体験した輪廻転生の神秘」の感想をまとめます。著者は、ブライアン・L・ワイス氏、翻訳は、山川 紘矢・亜希子夫妻です。

1.本の概要・コンセプト

本著は、アメリカの精神科医ワイス博士が、水恐怖を訴える患者の催眠療法中に患者におきた、前世及び中間生への退行を記録し、それを医師としての見地から考察して、前世・輪廻転生の存在および、そこで患者をとおして語られた、人生の真実の意味を肯定する内容になっています。

人生の意味は、中間生において、マスターと呼ばれる、霊的上意存在達によって、以下のように語られます(⑥については、マップでは省略しました)。

①人は一人一人が、神になることが最終的な目的
②輪廻転生を繰り返し、自分に足りないところを学ぶ。人生の困難は、生前に自分で決めた課題や、前世から引き継いだ負債・カルマ(他人にした悪行など)のせい。
③肉体がある現世でのみ、学びを行える。
④才能の差は、前世で学習した内容を引き継ぐことと、関係ある。
⑤世界は全部で7次元あり、魂の次元上昇をめざす。人間界は低い階層。
⑥魂のグループがあり、今世で親密な関係にあった人は、同じグループで、来世でもであうことが出来る。ただ、逆に前世で重要であった人に、今世ではまだであっていない可能性もあり、今世では出会わない可能性もある。

 

(催眠療法とは、日本では一般的ではないですが、欧米等では普及している方法です。
フロイトの理論で、精神病の原因である、抑圧された無意識のコンプレックス、それを意識化することにより、克服しようとする療法です。そのためには、意識の閾値を下げる必要、つまり催眠の必要があります。
通常はトラウマをおった幼少期に退行することが多く、前世に退行するなどと言うことは、ありえません。 あと僕は専門家ではないので、知ったかぶりで書いています。)

 

2.ストーリー

本の流れ(順番自体は前後しているのでまとめています)。

①水恐怖症のキャサリン(かなりの現実主義者)が、著者であり精神科医であるワイス博士(優秀な経歴をもつ精神科医)の元にやってくる。
②ワイス博士が催眠誘導した結果、キャサリンは前世への退行をする。
③前世で水により死んだことが明らかになり、それを思い出したせいか、キャサリンのトラウマは回復していく。
④それどころか、ワイス博士しか知らない秘密を言い当てる等、奇跡的な力さえ取得していく。
⑤キャサリンは、さらに前世で死んだ後に、中間生という、死後人生を振り返り、次の転生の準備をする空間への退行をする。
④高次元のマスターが、キャサリンをつうじて、ワイス博士に語りかけ、(1概要)の内容をかたる。キャサリンはこのことは覚えていない。
⑤ワイス博士は、はじめは疑うが、数多くの著名な学者による、先行事例研究が存在する事や、保守的な現実主義者のキャサリンの口から、マスターにより語られた宗教的な啓示や、彼女の超能力等、総合的に判断して、これをペテンではなく、事実だと確信するようになる。
⑥キャサリンは、完治したので、治療を終了する。
⑦ワイス博士は、前世や魂の不死、人の根本的平等を知り、心が穏やかになって行くことを実感する。
⑧学んだことを、家族等と共有し始める。しかし、おかしな人間と思われないために、最終的に本にするのに4年の歳月がかかる。

 

前世の記述引用(ネタバレ&労力回避で少しだけ、最初の前世退行)

「木が何本かと、石畳の道があります。料理のための火が見えます。私の神は金髪です。茶色の粗布で出来た長いドレスを着ています。足にはサンダルを履いています。私は二十五歳です。私にはクレアストラという娘がいます・・・・・彼女はレイチェルだわ。(彼女の姪)とても暑いです」

「大きな波が木を押し倒してゆきます。どこにも逃げ場がありません。冷たい。水がとても冷たい。子どもを助けないと。でも、だめ・・・・・子供をしっかりと抱きしめなければ。おぼれそう。水で息がつまってしまった。息が出来ない。呑み込めない・・・・・塩水で。赤ん坊が私の腕からもぎ取られてしまった」

 

3.分析

人物(マップではメイン二人以外省略)

・ブライアン・L・ワイス
本書の著者にして、実際に催眠療法を患者におこなった当事者。

ニューヨークコロンビア大学卒業後、エール大学医学部にすすみ医学博士を取得。病院や大学での研修等の後、ピッツバーグ大学の医学部に所属。その2年後マイアミ大学医学部所属、精神病理学部門の部長に就任。生物精神病学と薬物中毒の研究にとりくむ。その後、マイアミ大学医学部教授、附属病院の精神科主席教授に就任。その時点での論文執筆数は37稿。

長年の積み重ねにより、科学的思考が染みついていると自負している。経歴からすいさつできるように治療には薬物療法等、物質的なアプローチを用いることが多かった。

キャサリンの前世では、彼は父親であったり、先生であったりすることが多い。

 

・キャサリン
水恐怖症の患者。現実的保守的で、アメリカなので一応キリスト教徒に属してはいる。

ある仲のよかった別の医師に、ワイス博士のところに行くようにアドバイスをうける。退行催眠を施されることで、いくつもの前世を思い出し、さらに中間生で霊的上位者のメッセージをワイス博士に伝える。

トラウマを克服したあとは、人間的な輝きと、透視能力等の超越的な能力を身に着ける。ただし、あくまで現実的な人間で、治療の詳細、人生の意味等には、あまり立ち入りたがらない。

 

・スチュアート
キャサリンの不仲な恋人。前世ではキャサリンを殺した兵士であることが発覚。

 

・キャサリンの父
過去にキャサリンを虐待したことがある。前世でも彼女にたいして、負債があり、カルマが続いている様子が描かれる。

 

・エドワード
キャサリンと仲の良い小児科医で、突然キャサリンにワイスの元に行くように説得する。前世では、父親であることがおおい。

 

ワイス博士が前世を信じる理由

まず、前世について語る子供等、多くの先行研究がある事と、実際にキャサリンが、ワイス博士しか知らない秘密を言い当てたこと。そして彼自身が、それまでまったく信じてはいなかったが、カバラというユダヤ密教の予備知識を持っていて、それと合致すること等が、決め手なようです。しかし、そこまで、科学的な分析をしている印象はうけません。

 

4.学び

 

①ワイス博士の学び

・前世療法(ヒプノセラピー)に適合する人は全体の5%程度。

これはその後、ワイス氏が他の患者にも施術を行って、得られた結論です。その様子は、善療法2・3に詳しく書かれているようです。

 

・科学的裏付け&直感的確信

これは分析の部分とかぶってしまうのですが、ワイス氏は、自らの経験や、著名な先行研究、カバラ派の知識等から、キャサリンの語った世界観を信じると書いています。

 

・魂の不死・人の根本的平等をしれば、穏やかになれる。

死別した人とまた合える。しかも同じ魂のグループにいる。また一見、能力差・環境差があって不平等な世の中でも、実際には、魂は平等であり、ただそれぞれの取り組みたい課題やその進み具合の速度が違うだけであり、人は最終的にみな神になる。このような教えを確信することで、人の心は穏やかになると言っています。

 

(補足カバラとは何か?
自分もそこまで詳しくはないのですが、エジプト、インド・シュメール・ギリシャ等の古代思想を、イスラムを経由して、ユダヤ教やキリスト教が受け継いだ密教であり、その特徴は、正当教義とは大きく異なります。

キリスト教では、輪廻転生はローマにおいて否定されていますが、カバラでは、これを前提としています。また正義と悪の二元論で世界を考えて、正義だけを肯定するのではなく、通常のキリスト教では悪と考えられるものに、価値を見出す一元論の考え方をします。これにより、万能なはずの神がつくった世界に、悪が存在する理由づけができるわけです。

元々は東洋の、つまり肌が黒い人々の思想であり、仏教や道教もルーツは同じようです。キリスト教的男性崇拝一神教ではない宇宙観を西洋で保存する役割を果たしており、ルネサンスにも大いに影響を及ぼしたようです)

 

 

②自分の学び

・ニューエイジ運動の扇動?

あいかわらず、この本な内容が本当かと言うところから、始めます。

この本は、アメリカで、ニューエイジと言う、自然回帰的運動と言いますか、自己の中の神を目覚めさせることで、潜在意識を解放して、自己実現や、社会変革をしようという思想・運動です(引き寄せの法則の類だと思います)。

本著の内容もまさにそれで、立派な経歴の医師が書いた物として、それに一石を投じているようです。

このニューエイジ運度が、正いかどうかも、僕にはわかりませんが、国民の不満をスピリチュアルでうまくかわすための、政府の謀略だとか、色々な陰謀論がささやかれていたりするようです。

ただ、正直、前世とか神になるだとか、言われても泉ピン子、じゃなくてピンとこないです。自分は理系の人間なので、あまり心霊は信じることが出来ないです。

でも怖い話は好き、というか心霊は面白いので、あってほしいと思っているけど、胡散臭いので、真に受けるのは危険と言うスタンス。よって、この本の内容自体を信じることが、自分には難しいですね。

 

次に因果関係の検証です。

論理的に考えて、ワイス博士の根拠、因果関係の組み立てが不完全だと思います。

「前世退行→回復&奇跡→先行事例研究→カバラの教え→前世・輪廻は存在する」

というロジックなのですが、この中で、特にキャサリンの取得した透視能力を、本文では根拠としています。

カバラの教えは、あくまで宗教の教えであって、確認は出来ないものです。先行研究もそれが著名人の書いたものだから、無批判に受け入れるのでは、科学的態度ではりません(といっても科学的態度がなんなのか、いまいちわからない底辺の僕であった)。

「前世退行→回復&奇跡→前世・輪廻は存在する」

之のみがワイス博士が確認した現象であり、根拠なわけです。

キャサリンは、ワイスしか知らない過去を暴きましたが、これは分類的には透視能力ともいえます。そうなると

「前世退行→なんかすごいこと出来る人になった→この人の言うことは何でも信じられる」

こういうロジックになってしまいます。

キャサリンの能力について、検証しないうちは、前世の存在を証明するような、因果関係がつながっているとは、まったく思えません。

もちろん、ワイス博士が、陰謀をたくらんでいるとかそういうことを言いたいのではなくて、ようは博士が言っているように、まだ検証が必要と言うことです。安易に批判したいわけではありません。

 

(ところで、これ調べたら、何チャラ仮説みたいなのがあって、こういった現象を、超能力のせいだという言説は、すでにあるようです。つまり、どや顔で、既存の説を新説のように、かたってしまったぜ。無知な馬鹿男は無敵なのさ)

てかここまで書いておいてなんだけど、超能力って実在するん?

 

・現生の格差を肯定してない?

インドのカースト制度に顕著なように(これもよく知りませんが)、

前世が悪いから、階級が低いとか障害があるというのは、格差や暴力を肯定する可能性があります。

インドだと、下のカーストの人は、ただ道を歩いていただけで、むかつかれて撲殺されて、相手はなんの罪にも問われないと聞いたことがあります。

前世で悪行を行った人間が悪いのだから、悪人には何をしてもいいということでしょうか?

というか、前世で善行をつんだ人が、高い地位に生まれるのなら、なんで下のカーストの人をいじめるの? 日本だと、二世議員の人とか、すごい人格者ばかりだろうなあ。

 

またやる側の心理だけでなく、やられる側、つまり弱者の側も、

「前世の業だから、または今世の自分で選んだ課題だから、しかたがない」

とあきらめてしまわないでしょうか?

抑圧された弱者が、自分をせめて、清廉潔白に、しかも何の抵抗もせずに、生きてくれたら、支配者は楽ですよね。来世貯金始めますか?

 

仏教は、輪廻を否定して、こういった抑圧をなくす役割を持っていたはずですが、まあ、全部自分のせいだと思いたければ、思うがいいでしょう。でもそういう人は、仏陀と同じぐらい、人に感謝する心を忘れていますね。

 

 

・この本の世界観は本当に救いになるのか?

キャサリンは、80回以上輪廻転生しているらしいです。ですがまだまだ、学ばねばならないことがあり、それを繰り返す様です。その人生の中には、奴隷の人生や戦争のせいで死んだ人生もあった。と言いより悲しい人生の方が多かった。

はい、こう書くと、全然嬉しくないですね。これはある種の誘導です。僕のような馬鹿も少しは知恵が使えるんです。

最終的に神になるから、いいじゃないか。と言われそうですが、魂の数が不変ならば、それも、まだいいでしょう。

しかし、魂が常に生まれて、この世界を維持するために、多くの魂が苦しみ続けなければ、ならないのだとしたら、その世界は良い世界か? そんな世界をつくった神こそが、人間にとっては悪魔ではないか?

 

また、魂の数が不変で、最終的に、この物質世界が消滅して、みな神になるとしても、その間の痛み、犠牲は、だれが保証できるんですかね?

今も、沢山の命が、消されています。しかも厄介なことに、それは戦争のせいだけじゃない。いじめのせいだけじゃない。僕はこれを書いた後、ご飯を食べます。まさにそれです。

ブタさん、鳥さん。米さん。たくさんの犠牲者を歯ですりつぶして、僕は愉快な気分になることでしょう。仏陀も、殺生はいかん、と言っているくせに、穀物は美味しく食べていたわけです。

 

もちろん、植物にはたいした感情もなさそうだしいいではないか、とも浅薄残酷低劣下等にも思いますが、結局それを食べるはずだった命の分を、僕がいただいているわけですから。これも間接的な殺しなわけです。僕は人殺しなんです。

あの尊い命、その命が奪われる悲しみ、あとでどんな保障がなされても、それをなくすことなんて出来やしないのではないか、そう思うのです。

 

結局、お空の上のことはわからないのだけれど、本書の思想は、この世に生きる人間である僕には、少し独善的なように思えました。

てか、神になればOKなのか、でも神って何、正体しってるん?

 

 

今回は以上です。なんか批判的な内容になってしまいましたが、個人的に確かに、癒された部分もたくさんありました。人生観を変える衝撃的な本だとは思います。ですが、だからこそ、無批判に受け入れる危険性を考慮して、あえて上記のような内容にしました。

読んでいただいて、ありがとうございます。ではまたー

 

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