「読書感想」老子と暮らすー知恵と自由のシンプルライフー 加島 祥造著


 

1、どんな本か
横浜国立大学の元教授の加島先生が、長野県の伊那谷での生活やそれまでの人生から得た、インスピレーションや人生訓・人間観について、主に老荘思想を骨格としながら語っている哲学書です。

2、RAIMEI的ハイライト

①老子の思想ー道ー
現代の我々を取り巻く世界は西洋的な二元論で成り立っています。有るか無いか、善か悪か等です。また物には全て名前がついていて明確に区別されている名前のある世界であります。

老子の語る道(タオ)とはその二元論・名前のあるものとないもの、に分かれる前の状態の大元の世界です。

この道の世界は下の大局図(双魚図)で表すことができます。白と黒が接線で交わり白と黒の領域の明確な区別のつかない状態です。
この道という大いなる世界につながることで、豊かに生きようというのが老子や加島先生の教えです。

 

②口語で読む漢詩の面白さ
加島先生は英語の口語表現で漢詩を読むことで初めてその面白さがわかったといいます。

たかのしれた社会

ぼくらは人に褒められたりけなされたりして、
それを気にして、びくびく生きている。
自分が人にどう見られるか、
いつも気になっている。しかしね、
そういう自分というのは、
本当の自分じゃなくて、
社会とかかわっている自分なんだ。

一方、タオにつながる本当の自分があるんだ。
そういう自分にもどれば、
人にあざけられたって、
笑われたって
ふふんという顔ができるようになるんだ。
社会から蹴落とされるのは
怖いかもしれないが、
社会の方だって、
いずれ変わってゆくんだ。

大きな道(タオ)をちょっとでも感じていれば、
くよくよしなくなるんだ。
たかのしれた自分だけど、同時に、
たかのしれた社会なんだ。
もっともっと大きな「ライフ」というもの
それにつながる「自分」こそ、
大切なんだ。

そこにつながる
「自分」を愛するようになれば、
世間からちょっとばかり
パンチをくらったからって平気さ。
愛するものが、ほかにいっぱい見つかるのさ
世間では値打ちなんかなくっても、
別の値打ちのあるものが、
いくらでも見えてくるんだ
金なんかで買わないで済むものがね。

社会の一駒である自分は
いつもあちこち突きとばされて
前のめりに走っているけど、
そんな自分のなかには、
もっとちがう自分があるんだと
知って欲しいんだ。

(『老子』第十三章 加島祥造約)

③自分の潜在能力を発揮するには知足(自足)と閑が必要
知足とは足るを知るという意味です、これは消極的な意味ではなく、「足ることを知ることで自らの富に気が付き始める」という積極的な意味です。そして自分のそういった価値をより見るためには世間の要請からはなれた閑が必要だと先生は述べています。

3、感想
長くなるので、書ききれないのですが、このほかにも、先生は自分のなかで、人間の世界と、宇宙的な世界のバランスを取ることの重要性等も述べています。その他にもいろいろな考察や詩約がのっており、この本をゆっくり読むことで、そういったタオの世界に少しでもつながることができるのではと思える本です。そして実際に自然と共にある自分にあこがれを持てるようになる本です。

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