「読書感想」魔王2099 作者・紫大悟 イラスト・クレタ 

 

 

こんにちはRAIMEIです。小説「魔王2099」(作者・紫大悟先生、イラスト・クレタ先生)の読書感想です(小説なので以下ネタバレ注意です)。

最近読書のまとめ方として、4つに分類して書いています。

①火・直感的部分、コンセプトや概要。
②水・情緒的な部分、ストーリー。
③風・論理的な部分、設定等。
④地・実践的な部分、本から学んだこと等。

今回は、人物につては、特に創作ですと本を書く場合に最初に思いつく部分であり、またその人間関係や思想を表す部分なので③ではなく①に書きたいと思います。④地については、感想はもちろんですが、これからは実際の文章もここに書こうと思います。

 

1.概要

 

「舞台設定」
舞台は電子荒廃都市(サイバーパンクシティ)新宿2099年。魔王や勇者のいる剣と魔法のファンタジー世界アルネス、そして平衡世界の地球の位相が重なったことにより、幻想融合した世界。

混乱から生じた度重なる戦火、思想や人種の混合や環境の荒廃により、意味をなさなくなった国。各国の生きのこった都市が新たな支配権を確立し、人々はそこで魔法と科学の融合により大幅な進歩をとげた魔法化学の恩恵をえて、安息と停滞をむさぼっていた。

しかしアルネスの不死の魔王ベルトール(主人公)が500年の眠りから目覚めたことで、時は動きだし、新宿の暗部が暴かれることとなる。

嘗ての魔王の部下、新宿の支配者となり、魔王に反旗を翻した不死の吸血鬼マルキュス、仇敵であり戦う意味を失った不老の勇者、電子荒廃都市を舞台に、それぞれの理想が、剣と魔法と科学技術が、交差し激突する。

 

「登場人物」

魔王ベルトール
本作の主人公、惑星アルネスの不死の魔王。500年前に勇者グラムに敗れるが、転生の法により新宿にて復活する。見た目は高身長イケメン長い黒髪。

かつては不死と、魔法の工程を省略する無詠唱法により、絶大な力を誇ったが、復活した2099年には、技術の進歩について行けないロートルとかしており、序盤においては頼りない部分を多く見せる。

職探し・面接で苦労するも、ゲーム配信者という天職をえて魔力を回復した後は、本来の威厳を取り戻し、巨大な兵器も一蹴するなど力を見せつける。

彼の目的は一貫して、不死の強者である自身が、弱者同士の争いを調停し統治する永遠平和世界の実現であり、己の野心のためだけに動くマルキュスや、人の心の弱さを大切にする勇者グラムとは対立している。

「こんばんモータル~どうもー定命の者共、正の苦しみ味わってる?魔王ベルトール=ベルベット・ベール種バルト、即ち余である」

 

灼熱候マキナ
名前に反して色白白髪が特徴の乙女。魔王の腹心であり、魔王復活に唯一駆けつける。個人的にベルトールに好意を寄せている。彼女も当然不死であるが、そのために不死狩りから逃れる必要があり、稼ぎの良い職に就けないで500年の生活苦を強いられている。新宿の生活になじんでいるせいもあるのか、性格は高慢なところがなく、いたって庶民的であり、何気ない日常を大切にしている。マキナや仲間との関係が、魔王の考えを深化させる。本作のヒロイン。

「兎にも角にも、まずはベルトール様のお召し物が必要ですからね」

 

高橋
凄腕ハッカーの日本人の少女。マキナの友人であり、ベルトールを配信者にしたり、ハッキングによりサポートをおこなったり、その活躍は枚挙にいとまがない。科学的世界観の中で主人公を支える、解説役としての役割も大きい。続巻でも大いに活躍が期待できる。

「友達の友達だから今からあたしらも友達ってことで。よろしくベルちゃん」

 

勇者グラム
500年前魔王を倒した金髪碧眼の青年。その剣は不死の魂でも切り裂くことが出来る。魔王を倒した時、彼が語った勝因、「限りある命の輝きを信じる事」それが、不死の完全独裁による平和を唱える魔王の魂を揺り動かす。

500年後の世界では当然死亡しているはずだったが、不老の浮浪者となって生きながらえていた。しかし度重なる戦争経験から、嘗ての理想は聖剣イクサソルデの輝きと共に色あせている。終盤では一時的な魔王の相棒として手助けをすることになる。

「不死も定命も、僕は殺し過ぎたんだ・・・勇者なんて必要のない世界に、僕の居場所なんてないんだ。この世界に勇者は存在しない。もう疲れたんだ。」

 

血術侯マルキュス
もと魔王の腹心、不死の一人。かつて表面上は順々であったが、しかし魔王の強大な力に屈して従っていただけであり、500年間かけて、魔王になりかわる計画を進めていた。現在は石丸魔導重工(IHMI社)の社長であり、実質的な新宿の君主と言える。

彼が生み出した魔道具「ファミリア」は、技術の特異点と言えるもので、人々の生活に強い影響をあたえる一方、それにより魔王は魔法戦では最弱の存在に成り果ててしまう。本性は残忍で傲慢だが、一人称は私で話し方は慇懃であり、社長としての責任感も持ち合わせていることがうかがえる。

霊素を血液に変換する魔術にたけており、対象に一滴でも血液が付着していれば、爆殺することが可能。第一巻のボスである。

「嘗ての魔王という幻想は、ここに終わった。これからは、私が真の魔王となる。」

 

木ノ原
マルキュスの秘書兼護衛の若い女性。日本刀のような魔法剣による抜刀術を得意とする。終盤では勇者グラムと激闘を繰り広げる。普段は企画担当を行っているようだ。

「社長、イシマル君くんのグッズ展開についてご相談があるのですが」

 

2.ストーリー

 

①プロローグ&電子荒廃都市・魔王復活
500年前、魔王城内でのクライマックス、勇者と魔王の会話から。不死の力を信じる魔王ベルトールが勇者グラムに敗因を聞くと、「命の輝きを信じる」という答えが返ってくる。それに反発しながら、魔王は消滅する。

500年後電子荒廃都市新宿にて魔王は復活する。駆けつけたのは、嘗ての軍勢ではなく腹心のマキナのみ。そこで魔王は幻想融合について知らされ、その発展し、光にあふれた世界をみて驚愕する。

偶然ハッキングによるいたずらを行っていた高橋に目をつけ、マルキュスの情報をえたことで、IMIHに向かうが、マルキュスに裏切られ、惨敗する。さらにその後魔法適性が低いとされる、ならず者のオークにもなぶりものにされる。

 

②魔王様、働く
500年彼を待ち望んでいたマキナの住む住居は、驚くほどみすぼらしかった。自らの無能を自覚した魔王は仕事をして生計を立てるために、就活を開始する。

しかし、ファミリアを持っていない者を雇う企業はなく、それでなくても、魔王の時代感覚や生活感覚は新宿の庶民とはかけ離れ、なんとも頓珍漢な面接を繰り返す羽目になる。自信を失う魔王だったが、マキナの友人高橋のアドバイスにより、ゲーム配信者として、身を立てることにする。

数か月後、魔王は、もはや古い伝説となった魔王ベルトールを名乗る、ゲーム実況者として、つまり自分自身のなりきり配信を行い、その容貌とそれと反比例するポンコツぶりから、人気を博していた。

 

③不死炉
ベルトールは、とっくに寿命で死んでいるはずの勇者グラムをスラム街で見かけて後を追いかける。うどん屋台で再開し、グラムが不老となりながらも嘗ての信念を失いかけていることを知る。

その帰り道、高橋が例のベルトールをなぶったオークと口論をしているのに出くわす。そして、高橋の依頼で、料金でごねるオークのかわりに、秘密取引物奪取の護衛をかってでる。

ヤクザ同士の取引、それは高橋が町の情報やの元締め的存在から依頼されたものだ。ベルトールはそのヤクザを一蹴し、物資を手に入れるが、それは情報媒体だった。

突如、ベルトールの前に、戦闘用ロボットMGが立ちふさがる。人の手で倒せる代物ではない。しかしベルトールはMGと互角以上に意戦う、ゲーム配信により、信仰力がたかまり、ベルトールの魔力は上がっていた。MGをほふり、情報屋の元へ駆けつけるが、彼は既に殺されていた。そして残されたビデオレターから、不死炉について知ることになる。

インフラが荒廃した戦後に、各都市が支配権を形成できたのは、魔法のエネルギーを生み出すエーテルライン(霊脈)の上に位置しているからであった。通常の場合都市下には10本ほどのエーテルラインが交差しているのだが、新宿では3本しかなく、あきらかにエネルギー不足であり、そのエネルギーを補う方法として、機密に運営されていたのが、不死炉であった。

これは不死の魂を槇としてくべることで、膨大なエネルギーを得るものであり、不死狩りもそのために行われたのだ。特定の誰かの犠牲の上の繁栄、しかし不死炉をとめれば、大勢の都民が凍え死ぬ現実がそこにはあった。

 

④決戦魔王、エピローグ
一方、マキナが、マルキュス&木ノ原におそわれ人質にされる。ベルトールは単独でマルキュス達に挑むのは不可能と判断し、勇者グラムに助けをこう。二人の理想は交わらないが、弱者を助けるという信念をグラムは貫くことを誓う。グラムが、木ノ原と戦っている間に、ベルトールは、マルキュスの待つ不死炉最深部に向かう。

 

3.論理・設定

①「物語の軸となる、用語」

電子荒廃都市・新宿&幻想融合(ファンタジオン)
剣と魔法のファンタジー世界、人・妖精・獣人等様々な種族が住む、惑星アルネスと、科学技術の発達した地球の位相が重なり融合した。混乱の中戦争が勃発し、国という枠組みは意味をなさなくなった。魔法化学の発達、魔法に必要な霊素の源泉である霊脈を地下に持つ都市、この2つが新たな秩序を構成している。

魔族・不死
元々の種族ではなく、なんらかの理由により不死となったものの総称。肉体は不滅だが、魂は不滅でない。そのため、魂を破壊された者は消滅する。

転生の法(メテノエル)
魂の死を乗り越える魔王の術。ただし転生の場に立ち会う協力者が必要。これにより魔王は500年前の敗北から目覚める。

魔法
体内に存在する霊素(エーテル)を操作することで、世界の理を曲げる技術。

「魔力の起動」「術式の構築」「魔方陣の展開」「呪文の詠唱」「魔名の宣言」の5段階によりなされる。500年前は、魔王だけが、詠唱を疑似的に省略する「無詠唱法」を可能であり、魔法戦において圧倒的なスピードを誇っていた。

信仰力
この世界では人に認知されることで魔力が増す。信仰力を得られないと神でも死ぬ。

ファミリア
首筋に装着する補助脳&インターフェイス。ネットワークへの接続や、人工妖精による補助、従来の携帯端末の代わり等、様々な機能を持つ。特筆すべきは、魔法使用時の演算補助による、魔法の簡略化機能であり、魔法に適正のない者でも魔法の工程を3段階スキップすることが可能であり、これにより魔法はもはや特別な物ではなくなった。

マルキュスが、魔王に反旗を翻すために、開発した物であり、魔王は装着ができないようにしてある。これにより、復活した魔王は最速の魔術師から、もっと遅い魔術師になってしまった。

不死炉
エーテルライン(霊脈)の乏しい新新宿において、不死を槇としてくべることで、エネルギーを生み出す機関。

MG
人が乗り込むロボット。人間が鎧のように纏えるサイズの新型軽装タイプも存在する。

 

②「物語の軸となる思想」

絶対強者であった魔王の、人々のかかわりの中での、心境・思想の変化を描いている。力による支配と、共感による理解の弁証法的発展と言ったところか。

ベルトール
人は弱いから争うのであり、絶対的強者による支配こそが、世界平和のためにはふさわしいという考え。基本的には権力による統治の必要性を掲げる父権主義的な考えだが、その頂点に、不死の英雄を据えることで、永遠の平和を自足するという考え。後者はプラトンの哲人国家の不死版と言ったところ。

グラム
限りある命を信じる。人の弱さを信じる。あくまで不完全人間だからこそ、可能性を持っているというヒューマニズム的な考え。ただの楽観主義ではなく、人の弱さを覚悟したうえで、受け入れる共感に基づいた思想。

マルキュス
石丸重工の社長として、新宿の支配と管理をしている。背後にどのような思想や、権力が控えているのか、それは1巻では不明。

ベルトールとの関係でいえば、かつて魔王に膝を屈していたことを屈辱に感じており、その力を凌駕したいと思っているという点では、あくまで個人的野心家としての面が強い。

理想国家を目指すベルトールには、彼の屈辱感は些末事のように思われるのだが、マルキュスからしたら、彼と魔王の能力差こそが、不当であり、恨みの対象であり、いきる欲望でもあるようだ。

マキナ・高橋
日常や友情を大切にする現代庶民的感覚を代表している。

 

③「物語の軸となる、魔法と戦闘描写」

本作では、基礎的な設定をしっかりと作るとこで、複雑な表現を避けている。戦闘シーンの描写では、魔力の仕組みと、魔法発動の5工程を基礎として、スピーディーな戦闘を描いているので、作風から予想できるような複雑な駆け引き等は存在しない。

魔力(霊素・エーテル)は、本作では人体に内在する。また信仰力(人々の認知)でも上げることが出来る。この魔力をどのように向上させるかと言う点で、日本人の高橋を通して、現代のネットワーク技術が大いに活躍する。つまり魔力と現代技術の接点を描く上で、そのような準備を設定段階で入念にしている。

魔法の5工程、①体内の魔力起動、②呪文による術式の構築、③魔方陣として外部に展開、④呪文を読み上げる詠唱、⑤魔名の宣言、が設定してある。

この魔法の工程を省略することが本作の魔王や、ボスであるマルキュスの強みであり、この点を中心にバトルを展開することで、ようはある焦点を意図的に設定することで、それをめぐる駆け引きを描くことが出来る。作中ではマルキュスはファミリアにより魔法の省略を行っており、その不死であっても再生不可能な機械の部分が駆け引きの鍵となる。

 

④「物語の軸となる、文体」

序盤で荘厳かつ中二病的な文章で引き込んでおいて、中盤以降は就活の面接やゲーム配信等、庶民的な描写や魔王の心境の変化を描き、ラストではそれらが上手く溶けあった文章になっているようにも思える。

序盤の文章を一貫して続けることは、読者も望んでいないであろうことを、作者もわかって書いていると考えられる。

 

4.実践・感想

 

①以下本文引用。プロローグとMGと戦い。

 

【【餓竜が、食らう腐肉の障害に思いを馳せることがないように、輝かしい文明発展の恩恵を享受する者達もまた、その下に積み重ねられた憐れな屍に関心を抱くことはない。 マルキュス=ドルクライト著『我が興隆』より抜粋

プロローグ 剣と魔法のファンタ―ジ―

大陸歴一五五九年 竜の月 一二日
地下魔王城逆天守、王座の間。
その一閃を以て。アルネスに存在するとある一つの物語が終焉を迎える。
流麗であった。
勇者がその手に持つ白銀の剣から放たれた斬撃は、一条の光となって大気をきり、霊素を裂き、宿業を断ち-魔王を切った。
ヒトと魔族の生存競争、定命と不死の覇権をかけた戦争、勇者と魔王の最終決戦、後の世で『不死戦争』とよばれるその戦争は、ここに勇者を旗頭とする定命の軍勢の勝利で決着がついたのである。
戦場と化した魔王上の王座の間は、一瞬の轟音の後に静寂に包まれた。
禍々しくも荘厳な王座の間は、先の戦闘で柱は俺、真紅の絨毯はぼろ布となり、王座は粉々に砕け散っている。
相対する二つの影。
此方(こなた)、青の外套の下に白銀の軽装鎧を纏い、まばゆい輝きを放つ銀の聖剣《イクサソルデ》をその手に携え、剣の輝きよりもさらにきらめく意思の光をその瞳に宿した、金髪碧眼の人間の青年。
彼方(かなた)、ねじくれた二本の角を戴く竜の頭蓋を頭部とし、闇が滲んだかのような漆黒の片刃剣、魔剣《ベルナル》を持ち、同色の外套に身を包んだ巨大な異形。
天を穿つような二本の角は今や片方が半ばから折れ、竜の頭蓋も大きな切創と何条もの罅が入っている。
異形がその顎を開き、霊素を震わせた。
「見事だ、勇者よ」
儼呼(げんこ)たる音声で、臓腑に響くような低い声が王座の間に響き渡る。
魔王はその手に持つ魔剣を取り落とし、けんは黒い霞となって散っていく。
勇者によって、体を両断され、地名の一撃を受けた魔王は、その巨大な異形の体の末端から枯葉のように崩れていき、闇色の外套の中から長い黒髪の男が姿を現し、投げ出されるように地に膝をつく。
それは、異形と化していた魔王本来の姿だった。】】p3から5まで引用。

 

【【 《灰明-MGアッシュドーン-》の腕を覆うガントレットが開き、収納されている魔杖剣の柄をマニピュレーターで引き抜いた。黒ミスリスで作られた魔杖剣は、魔力弾を打ち出すバレットモードと、魔力剣を形成するブレードモードをスイッチすることの出来る遠近両用の魔導兵器だ。
魔杖剣を中・遠距離専用の場レッドモードへと変更させ、肘に取り付けられた補助腕で魔杖剣に金属製の大容量スクロール・カートリッジを装填。
肉眼では消えたように錯覚する程の速さで走るベルトールも、最新式のエーテルセンサーと神経接続したMGには簡単にとらえられる。
照準を合わせられ、魔杖剣の先端から青い魔力の弾丸が連続して射出された。
これは魔導銃の《霊矢-エーテルアロー》と同質の物であるが、その威力は護身用の拳銃と、軍用のアサルトライフル以上の差がある。
強化されているとはいえ、生身の肉体で受けられるものではない。
青い弾丸は安普請の倉庫の壁を軽々と穿っていく。
ベルトールの速度でも逃げられない。
急に足を止めたベルトールを凶弾が捉える、その寸前である。
「《滅閃》デル・レイ!」
移動中に構築と展開を完了、無詠唱で詠唱を省略、魔名を宣言し、魔法が発動する。
両腕を掲げたベルトールの掌の先から、黒い閃光が青い弾丸を飲み込みながら《灰明》に向かって伸び、直撃し、圧縮された霊素が爆発を引き起こした。
黒煙が周囲に広がり、《灰明》の姿を覆い隠す。
(さすがにこの程度で倒せるとは思えんが・・・・・・。)
煙を引き裂き、青い弾丸が飛び出してきた。
ベルトールはその場から飛び退り、距離を取る。今までベルトールがいた場所を、青の弾丸が穿つ。
「魔力障壁か」
煙が晴れ、無傷の《灰明》の姿が顕わになる。その前面には赤い障壁が展開されていた。
《全盛期ならばあの程度の防御、軽く貫けたものを・・・・やはりフォロワー数たかだか数百万程度の信仰力では、魔力放出量はこれが限界か》
『フォロワー数擦るね!?』
ベルトールは高橋のツッコミを無視した。
信仰力がある程度戻ったとはいえ、全盛期には程遠い。
だが収穫はあった。
最新の魔導兵器相手であっても、ベルトールの魔法は無効化されなかったのだ。
「悪くない、遊べそうだな」
ベルトールは腕を振るい、魔力で編んだ漆黒の鎧を呼び出し纏う。彼の魂から鍛造された魂魄兵装の召喚だ。通常の魔法とは異なり、魂から作り出される魂魄兵装は簡単な儀式動作で召喚が可能となっている。
「《影剣》」
次いで影を束ねたかのような、武装鍛造の魔法で造られた黒い魔力剣が握られた。
剣を手にしたベルトールが全法へと弾丸のように疾駆する。
《灰明》は魔杖剣をブレードモードへと変更。銃身部分が展開される。
魔杖剣の先端から赤い魔力がブレード上に放出される。ブレードの長さは二メートルを
超え、発せられる高熱で、大気が大量の羽虫が羽撃くような耳障りな音を立てる。
迫るベルトールを迎え撃つべく、《灰明》が構える。
『これまじでやばいってベルちゃん!』
「接近戦で余とやり合うつもりか! その意気やよし!」
《灰明》が地面を砕きながら走ったー否、跳んだ。
ミスリル繊維を束ねた人工筋肉による補助に加え、強化魔法と、背面のスラスターの項がでm自足にして百二十キロに達する。
巨大な金属の塊が高速で移動しているのだ、ただそれだけで質量の暴力となる。
だがベルトールは後呂に逃げるでもなく横に避けるでもなく前へと走った。
-無茶な特攻だ。
そう《灰明》の搭乗者は思っただろう。重量差は歴然。このままぶつかれば紙切れのように吹っ飛ぶ。
《灰明》はブレードを振りかぶり、横薙ぎに払う。
ベルトールも剣を上段から不死降ろした。
黒の剣と、赤い光剣がぶつかり合い、閃光が弾け、霊素が電撃を纏って地面を走る。
お互いに刃を弾き、再び打ち付け、切り結ぶ】】p193~196引用

 

②RAIEMIの感想

わくわくさせてくれる完成度の高いライトノベル

最初の文章を読むと、中高生や仕事につかれた社会人が余暇に楽しむには、少し敷居が高い感じも受けます。しかし通して読むと、ありきたりな設定がおおく、戦闘緒でのどんでん返しもあまりなく、非常に読みやすいです。

これは悪い意味ではなくて、設定を良く練っているために、余計な小細工を重ねなくてよいということだと思います。さらに文章も硬い文章から、柔らかい日常描写、スピード感のある戦闘描写等、必要に応じて、しっかり意図的に書き分けられていて、格好いい世界観と練りこまれた設定にもかかわらず、誰でも楽しめるように、作者の紫大悟先生が、下地を良く練りこんだ結果だと思います。キャラクターも魅力的ですし面白かったです。特に序盤の荘厳な文章がかっこ良くて引き込まれて購入を決めました。僕は素人なんですが、なんか偉そうで、すいません。

今回は以上です。見ていただいてありがとうございました。ではまたー

 

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