「怖い話」扉のバタン子さんまたはスライスさん

 

これは私が中学生の頃、扉のバタン子さんまたはスライスさんという幽霊に遭遇したらしい話。

私の学校は結構古くて、校舎内に鉄の扉が使われている個所があった。一つは普通の教室でスライド式の鉄扉だけど、危険だということなのかもう使われてなくて視聴覚準備補助室とよばれていた場所、もう一つは体育館内の入り口で、こちらは両方向からスライドするタイプ、こっちの方は外側の扉と、下駄箱を挟んで中へ続く扉の二カ所。

バタン子さんorスライスさんはそういう鉄扉があるところに出没するうちの中学では伝統的な怪談だった。昔ある女子生徒がいきおいよく閉まる鉄扉に誤って体を挟さんでしまい、腕が千切れたり大けがをしたりで死んでしまって、それが化けて出た姿で、もし彼女を目撃してしまうと、呪いの力で自分も扉に挟まれて大けがをするというわけ。

修学旅行とかで聞かされる伝統的なやつだから、私を含めて、もちろん別に誰も信じてはいなかったと思うけれどね。一年生は別かな。

でもそんな私の確信を揺るがして、180度ひっくり返す事件が2年の後期におこったわけで、今からの話はそれについてね。

その日、卒業する3年生のための送迎会の準備を私たちは手伝っていて、体育館でイスとかを並べていたのね。本当は先生たちがやるんだけど、私のグループは担任の先生と仲がすごく良くて、先輩たちにお世話になったのもあるし、特別に設営を手伝っていたの。

作業も終盤になると、先生は私たちの担任の1人だけが残り、あとは私達数人の生徒が細かいところを調整しているという感じだった。それで作業自体はスムーズに終わって体育館を後にして、部活もさぼって私たちは何人かで下校することにしたわけよ。

で返る前に体育館の近くをまた通り過ぎるんだけど、その時に、妙な胸騒ぎがして、覗いてみると、体育館の入り口の鉄扉があいていたのね。私達が最後に出て設営も完璧だから、開いているわけがないのに。

私は何故か気になって、走りよったのよ。友達たちは、あんまり興味なさそうだったけど。「先生が何か忘れていて、また中にはいったんじゃないか」なんて言うわけよ。

その可能性の方が高かったんだけど、それならそれで、先生を驚かせてやれるし、とにかく、中に入ったわけ。

それで体育館にはいって下駄箱にいくと、体育館内に通じる鉄扉はしまっていて、電気もついていないから、少し薄暗かった。それに下駄箱には先生の靴もなくて、もしかして閉め忘れかなと私は思ったのね。

一応電気をつけてみようとスイッチの方に近づくと、その時急に入口の鉄扉が閉まって、私は振り向いたの。少し怖くなったけど、誰か仲間のいたずらだと思って、ふざけて仲間の名前をよんだわ。

そしたら仲間も答えて、お互いに名前を呼び合ったのよ。でも私たちはどっちも、相手の冗談だと思いこんでいて、実際には何かおかしなことになっているって、すぐには気が付かなかった。

私からでも仲間からでも、扉があかないのよ。凄い力で抑えられているというよりも、その場に固定されているただの壁という感じで。しかも当然内側からは鍵なんてかけてないのに。

仲間内一人が先生を読んでくれることになって、私は安心してとりあえず待っている間だけでも電気をつけようと思った。というのはもう少しずつ暗くなる時間だったから。でもその時に急に後ろに気配がして、誰かが私を見つめているとそう思って、振り返ることが出来なくなったの。

この時の後ろは、体育館の内扉のほうね。その視線はたぶんだけど、悪意とかはない。というよりも何も感じない。よくサイコパスなんかを爬虫類のような目と言うけれど、それはまだ本能みたいなものがあるでしょ。でもあの視線はまるで何か無機物から覗かれているみたいな。感情どころか、生きている感じそのものがない感じだった。

この時私は外でなんとか扉を開けようとしてくれているみんなの声も聞こえなくなっていた。自分の後ろに全部気持ちを集中させて、それで思い切って後ろを振り向いた。でもそこには誰もいなくて、さっきまでしまっていた、体育館の内側に続く扉があいていたのよ。

私はこわかったけど、体育館の中に入って行った。別に先生が来るまで待っていればよかったんだけど、どうしても奥にいるはずの何か私を呼んでいる存在を確かめられずにはおけなかった。

体育館も照明はきられていて薄暗かった。電気をつけて見渡すと、普通にイスが並んでいて別に誰もない。私は目が悪い方じゃないので、何かおかしなところがあったり、誰かが隠れていてもすぐに見つけられるはずだった。でもその時ホラー映画によくあるように、たぶん上か、後ろに女がいるんじゃないかとこわくなった。頭に体育館の天井から首をつる女の映像が浮かんだ。でもそんなのは実際にはいなくて、私がキョロキョロ見渡すと、
左後ろにある用具を入れる部屋が空いていることにかが付いた。当然閉まっているはずなのにね。

私はそこに入ったわ。もう破れかぶれのほかに、変な好奇心がわいていたの。そこは普段はあまり使わないけれど、白い壁で、パンクしたバスケボールとか、良くわからない古い器具だとかが置いてある部屋。

それで、ただそれだけの部屋で今までも何度か入ったことはあったのだけど、でもこの時私は初めて、この部屋に不自然さを覚えたの。それはこの部屋にはもう一つ奥に違う部屋があるというそんな気がしたから、というか右奥にドアノブが見えたのよ。確か隣には何も部屋はなったはずなのに。

私はそこにいってまじまじと見た。ドアノブの周りには、用具が積み重なっていたけれど、たしかに隙間からドアらしきものが見えた。私は用具をどかして、ドアを開けられるようにした。ただドアの向こう側は曇りガラスになっていてはっきりしなかったけど。でもドアの前には誰かがいたというわけではなかった。

私はドアノブを引いて扉をあけて中に入ろうとした。ドアは少し重かったけれど、普通にあける事が出来て、私は少しそれを開けたんだけど、でもその時向こう側から凄い力で、急にドアノブが引かれて、それでガチャンとすごい速さでドアは閉められてしまったの。誰かがいたわけ。

私は、それでも力をこめて、ドアを引こうとした。自分でもなぜだかわからないけれど、なぜか少し怒ったように、向きになっていたのを覚えているわ。でもドアはもうびくともしなかった。体育館の入り口と同じ。

まるで私をおびき寄せておいて、それを拒否して、楽しんでいるような感じ。私はなにがなんだか、無性にイライラしていた。でもらちがあかない。それであきらめて帰ろうとした時、また後ろに気配があって、ふりむくかまよった瞬間、瞬間というか、私はそこから先を覚えていなくて、気が付くと保健室のベッドに寝ていて仲間に囲まれていた。あの場所で倒れていたらしい。

私は用具室の右奥の扉について先生に聞いたけど、そんな物はないと言われた。私はおかしいと思い、数日後に怖いのを我慢して確かめたんだけど、確かにそこは普通の壁でドアなんかなかった。

私はバタン子さんの呪いを思い出して、一週間のうちに、彼女が来るかもしれないと思った。別に来てもよかった。あんたは何がしたいのかと文句言ってやろうと思ったくらい。

そして結論から言うとたぶん彼女は現れたわ。あの時私は学校から帰宅して、二階の自分の部屋に階段を上がって向かっていた。二階には部屋が3つあって、一つは上京してその時いなかった姉の部屋、もう一つは私の部屋、あと一つは両親の部屋。

私の部屋はちょうど中間点にあって階段を上るとまず姉の部屋の扉が廊下と平行に一番初めに見えるような感じだった。それで私は階段をのぼり、廊下に出たんだけど、その時私の部屋のドアが開いていて違和感をもった。私はいつも開けたら閉めよう習慣を身に着けているんだから。

おかしいと思いながら近づくと、その時ドアノブを内側から握る手が現れたのよ。私は一瞬ひるんだけど、ついに来たかと思って、すぐに早足で数歩前に出たわ。それでドアノブに手がふれようとした手前で、そのドアはガチャンと、また勢いよくしまってしまった。

私は自分の部屋の中に、バタン子さんがいると思うと、さすがに怖くなった。でもよく考えたら。上京していた姉が返ってきていたずらをしているだけかもしれないし、と思い返して、大丈夫私は陽の者、誰とでも仲良くなれる、というやつとは仲良くなれる。大丈夫だと言い聞かせて、ドアノブを握りそして、あっさりとドアは開いたわ。

誰もいなかった。誰もいないけれど、電気だけがついていて、道路に面した窓だけがあいていて、風でカーテンがたなびいていたわ。私は急いで開いていた窓からベランダに出て、外や下を覗いてみたけど、横には洗濯物と物干し竿、道路には中年のサラリーマンのおじさんが歩いているだけだった。

私の体験談自体はこれで終わり。でもまだ後日談があるから聞いてちょうだい。実はこれを読んでいる人に謝らなければいけないことがあるの。それはバタン子さんまたはスライスさんと実際に遭遇した人間からこの話を聞いた人は、一週間以内に、バタン子さんまたはスライスさんと出会ってしまう、つまり彼女が貴方のところに来てしまう可能性があるの。

実際問題、話を聞いただけで、彼女が来るかはわからないし、それに残念ながらおまじないとかはない。私の場合は何もされずに助かったけど、もしかしたら、人によっては扉をバタンとかピシャリとしめられて、指や腕が千切れてしまうかもしれないから、気を付けてね。でも一週間耐えれば大丈夫だから。

でもなんで最後にこんな話をするかというと、それは私が陽の者だからかな。あんまり気にしない事が大切よね。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です