「怖い話」呪神様と氏神様(仮)

 

今から俺の体験を紹介するわけだけど、先に書いておくと固有名詞は改変し、会話のセリフ等にいたってはやや小説風に作っている部分がある。特定されるのはいやだし、俺自身冗談めかしていないと、今でも怖い部分があるからだ。素人のヘタな文章でもOKな人だけ読んでくれ。

これは俺が数年前に爺ちゃんの田舎に行った時の話。
当時彼女にふられて軽いノイローゼになっていたから、そんな時に地方で農家をいとなんでいる爺ちゃんから田舎に来ないかと誘われて、自分を癒す目的で少しの間滞在することにしたんだ。

大学の長めの夏休みが始まり、都内から電車とバスで移動、熱さと失恋の痛みで意識はやや朦朧、移動中ほとんど爆睡、気が付くと目的地でバスの運転手に揺り起こされて、はじめて眺めたというよりも、ガキの頃に数回来たことがある懐かしき土田舎の景色は、いきなり俺を圧倒した。

田んぼというか聳え立つ山々というかカエルや蝉のうるせー声と澄んだ空気というか、とにかく、この人間様が支配する現代社会において、片隅でしぶとく自然が氾濫していやがった。都会の申し訳程度の観葉植物や公園のこぎれいな木や隅の方に生えている雑草とは大違いだ。やつらはよほど遠慮しているらしいが、ここでは俺の方が遠慮してしまう。

と随分わざとらしくかいたもので、ようするに俺は久しぶりの自然に感動したのだった。理系大学生だからか自然にあまり接点がなかったのだ。それに昔の事というのはあまり覚えていない、というよりも小学生の見る自然と、大学生の見る自然は、対象が同じでも何かが違うのかもしれない。

気持ちのいい場所で、俺はあえてしばらくスマホの地図をあてにせず、かすかな記憶をたよりに、そこらをぶらぶら歩くことにした。それに大体の目印はあり、この時いた地点では田んぼと家々がまばらにある程度だったが、もう少し先にまとまった集落らしきものが見えていた。
景色としては俺が歩いている道の右手には広大な田んぼが並行にあって、その奥は山林。左手には家がまばらにあり、その後ろに山林。前方の先に集落と背後の山々があるって感じかな。一応車が通れるくらいの道幅はあったが、バスの駅は集落よりも手前の地点で終点だった。まあ田舎者は自前で車をもっているからね。

すこし呑気に歩いていると、道からやや内に入ったところ、道の左側面から奥の小さな山林というか森林に等間隔で石の道が続いている場所を発見して、好奇心からふとそちらの方に何の気なしにはいりこんだ。そしてしばらくその道を行くと、その先には木で出来た小さな家のようなというか、祠(ほこら)がありその中にご神体であろう銅像が祀ってある場所にいきついたんだ。

その祠には、米とかお菓子とか色々な物がお供えしてあり、俺も何かお供えをすることにした。どんなに強がっても失恋の痛みはごまかせないから、そういう時は神にでも祈るしかないとね。

それで目をつぶって、手を合わせて、おっとその前にお供え物だと思って、俺が愛食しているカカオ80%の海外直輸入チョコレートを備えて、それで祈ったわけ。しばらくは穏やかな沈黙があたりを包み、俺は色々な事を考えた。進路の事、彼女の事、レポートがたまっていること等。

でもそれは突然後ろから聞こえた声で断ち切られ、突然のことに目をあけ振り向くとそこに誰もいない、いやそんなはずがないと視界を下に向けると、そこにはどこにでもいるようなガキんちょがいたずらそうな笑顔で佇んでいたんだ。

「なんだここら土田舎村の住民か、何か用かい?」
「お兄ちゃん、なにか美味しそうなものをもってるねえ。僕にくれない?」
「へ、ああこのチョコレートね。まあいいけど、しかし親に知らない人から物をもらってはダメだと習わなかったのかな?」
「いいからさあ、それにおれいもするから」

なんか非常になれなれしいガキだった。俺はあの時拒めばよかったんだが、謎の親切心でチョコレートをあげてしまったんだ。これが全ての失敗の元だったと今でも思う。

「ありがとう・・・・えこれ苦過ぎ!いたずらチョコじゃないか、大人の癖にだましたな!」
「ププ、これはカカオ80%で、まあお子様にはわからないだろうが、いい薬にはなったろうさ。これに懲りたら知らない人に・・・」
「うんよく味わうとこの大人っぽい苦みがとても旨い、もっとちょうだい」
「まじか、おいおい無理するなよ」

ガキは、結局俺のチョコレートをさらにもう一枚ガツガツと平らげ、そしてお礼だと言い張って生米を手渡してきた。あきらかにお供えをぱくったやつだ。とんだクソガキだった。

「いやそれはさすがに冗談が過ぎるぜ。まあ子供だからしょうがないとはいえ、目先の利益のために、軽率な行動をしてはいけないと校長先生にならわなかったのか?第一生米なんて食べてもこちとらちっとも旨くないし」

「でもお兄ちゃんは僕がこの苦いチョコを美味しがるとは思わなかったでしょ。それにもしこのお米を食べてくれたら、面白い景色が見れる上に、なんと今なら特典として僕の宝物ガンダムの限定カードコレクションがついてくるんだ。」

少年はそういうと、ポケットからカードを取り出した。しかしよくみるとそれはガンダムじゃなく伝説のパチモン、モビルフォースガンガルだった。

「まあいいさ、子供に付き合ってやるのも面白い」俺はそういって、生米を口に入れた。もちろんカードがほしかったというわけではない。

瞬間世界がぐにゃりと曲がった。まるで自分の体がムンクの叫びのムンクさんになったような感覚だった。吐き気がして視界が白黒になり、何かいおうとしても声も出せず、しかもクソガキの姿はもうどこにもなかった。

俺は今にも死にそうな状態だった。どこかに消えたクソガキのことなど考える暇もなく、とにかく生存本能だけで、石の道を戻り、そして田んぼの脇の道までもどったがどうやら、そこで力尽きて気を失った。

しかし、その気を失う瞬間にある幻想が俺をかすめた。俺が見つめていた田んぼに、白い服をきた女の人が背を向けて立っており、その人が振り返ると、急に世界がかわり、俺は地獄の中にいた。

そこは、今いる場所と変わらない何の変哲もない田畑だった。だが、おれは直立していて、あたりにはガリガリに痩せた骸骨が着物をきているような人間がいた。そして気が付くと、その人達は俺の脚や腕にすがりついてきて、しかも目が合っても、ためらいとか、逆に満面の笑顔とかでもなく、何の遠慮もなくさも当然とでもいうように必死な形相で強く歯を立てて俺の肉を食らおうとしてきた。おれは彼らに何かを訴えようとしたが、無駄だった。彼らがそれを聞くはずがないと、どんな言葉も無意味だと思った。誰かが俺の中から何かを引っ張り出した。俺の体から内臓を引っ張り出し、そしてそれを奪い合っていた。綱引きだ。再び地面に倒れ、そして死を確信した。

――――――――
気が付くと俺は布団の中で寝ていた。なんだか懐かしい匂いがして、あたりを見回すと、そこは以前来たことがあるような場所、少したってそこが、爺ちゃんの家であることに気が付いた。

「おお起きたか。まったくまさか道の真ん中で熱中症になって倒れているとは。さすがのわしでも孫がそこまで軟弱だとは思わなかったぞい」

ふすまを開けて、爺ちゃんが顔をのぞかせた開口一番。どうやら爺ちゃんか付近の人が倒れた俺を助けてくれたらしい。こちらはまだきょとんとしていたが、爺ちゃんがおどけているのは、久しぶりに会った照れ隠しみたいなものだとすぐにわかった。

「そうか俺は熱中症で倒れていたのか・・・いやーさすがに土田舎、世間が狭いから何か危険があっても大丈夫だというわけね。しかも途中で見知らぬガキにチョコレートはたかられるし、お礼とかいって生米を食べさせられる、まったくこちとら都会人の人情の冷ややかさからは想像もできない暑苦しさだね」

俺もフランクな冗談で照れ隠しをしながら応戦した。気絶する前に俺が見た幻覚が頭をかすめたが、爺ちゃんと話して心がかるくなった。所詮は熱中症の影響で見た幻覚だと割り切れると思った。が、なぜか爺ちゃんの顔は急に青くなり、そして予想外のというか、あまりにテンプレな事態がまさかのこの俺に起こった。

「食べたんか・・・・呪神様の米を食べたんか?」
「はい?まさか米に毒でも入っていたとうこと?」
「食べたんかー、食べたんかときいておるんじゃー」

おきてすぐにこの展開は早すぎた。爺ちゃんはすごい剣幕でまくしたてて、俺は困惑した。しかし俺は普段からこういうある意味理不尽な場面に対して一応反論する癖を身に着けていた。

「なぜ食べたー、米を何故食べたー。 あれを食べたら呪神様がくるぞ、魅入られたんじゃぞお前は。」
「いや、そんなこと言われたって食べちゃいけないなら、事前に言っておいてくれなきゃ。後から言うなんてフェアじゃねえし、ほうれんそうもできないのに、後から怒るとか、モンスター上司じゃあるまいし」

「何を言っておるか。普通に神様に備えてある生米を、いい年した孫が盗み食いするなんて思わんじゃろうが」
「そういわれたら心苦しい」

常識を盾に割とあっさり言い負けてしまった。なにか腑に落ちなかったが。そして、爺さんは天井を見上げて何事かを呟くと、すぐに部屋を出て行った。そして入れ替わりに婆ちゃんが入ってきて、俺を慰めてくれた。

「呪神様に魅入られたんだね。大丈夫だよ、いま爺さんが住職さんに電話してなんとかしてくれるからね」悲しそうな声でそういう婆ちゃん。

もろにテンプレだった。俺はただ田舎に帰って、爺ちゃん婆ちゃんに甘えようとしただけなのに。悲しみのあまり泣きくずれる俺を、婆ちゃんはよしよりと撫でてくれたが、二人の意思は全く疎通していない気がした。

―――――――――

「いやー呪いとかって本当にあるのかね?」
「何を言ってるんだ。その米を食べて呪神様を見て、気絶したのがいい証拠だ。」
「そうだよ。このままでは連れてかれてしまうよ、たしか戦前の事だが、近所の山田さんの息子さんが呪神様に魅入られて神隠しにあったんだよ。」

おかしなことになっていた。テンプレの展開に困惑する俺をのせて、爺ちゃんのおんぼろ車セダン(田舎なのになぜ?)は山道をはしっていた。爺ちゃんは俺にガタガタぬかすなという調子だったが、俺は山道とおんぼろ車にも、そういってやれよとひそかに思った。

そしてしばらくすると、山の中腹あたりだろうか、寺に到着した。今度は住職に理不尽に怒られると思うと憂鬱だった。

俺達は少し年上の若い坊さんに案内されて、でかい仏像が置いてある本堂にはいって、住職と対面した。

「B君(俺の名前ね)、大きくなりなすったな。」
「あ、はい・・・そうか確かに貴方にはあったことがある。昔遊んでくれた坊主のおじさんだ。思い出しました。爺ちゃんの変な迷信癖でとんだ迷惑かと思いましたが、これは怪我の功名です。第一昔貴方自身が退屈する俺に、仏教には呪いなんてないと教えてくれたじゃないですか?」

この住職のおじさん改めお爺さんは、昔田舎に家族旅行した時に、数回俺と遊んだりお菓子をくれたりした親切な爺さんで、この時はじめてそのことを思い出した。

「まあ迷信というものはある、つまり迷信はない。しかしまず君は自らの行動を反省するべきではないのかな。人のお供えものを食べたのだから」

またはじまったかと思ったが、この人は立派な人というイメージがどこかにあったらしく、俺は素直に従った。

「そうですねそれは反省しています。詳しい経緯を話します。実は子供に出会いまして・・・・」

俺は事の経緯を話した。
「そうか、おそらくだが今夜その女性、呪神様はお前さんを迎えに来るはずじゃ。しかし安心しなさい。わしが結界を張り巡らせた部屋を用意しよう。そこならば、容易に近づくことが出来ないはずじゃ。伝承によると、一晩耐えれば逃げ切れるはずじゃ。」

「あの裏事情というか、由来は教えてもらえないのですか。そういう情報があったほうが、対策しやすいというか。それがテンプレというか。なにか可哀そうな幽霊かもしれないし」

「明日になりすべてが終わったら話そう。今話しても無駄じゃ。あの呪神様は、同情が通用する相手ではない。余計な事を考えずに、ただ反省して、一日こもっていたほうが良い。さっそく部屋を用意しよう。いやまずはみそぎじゃない」

俺は場所を移動して、まずは水浴びをさせられた。そして次に一日引き籠る部屋に通されることになったのだが、そこで以外だったのが、外に出たことだ。

爺ちゃんからの話だと、この寺は、本堂と住職の住む住居が一体(というよりも廊下で直通につながっている)となっており、きっとそこに泊めてもらうのだろうということだったからだ。

住職を先頭に、俺と爺ちゃん婆ちゃんは寺の庭の奥の方に向かった。寺は本堂をはじめとした建物がある敷地を山林から区別するために、四角い外壁が囲んでいるような構造になっており、その奥の壁の付近についた。

そこには大きな岩があり、住職はそれを力いっぱいどかそうとし始めた。よくはわからなかったが、俺も手伝い二人でそれをどかすと、なんとそこには、地下室の入口と思われる扉があった。

「地下にとまるんですか?」
「庫裏(くり)はちと人が住むには不便での。ああ庫裏というのは、僧侶が住む住居部分のことじゃ。方丈ともいうがこちらの呼び方だと、高位の僧侶そのものをさす場合もある。しかしどのみち宗派や言葉の違いじゃよ」

「でもどうしてこんなところに地下室が」
「それはほら、住職様も男だからヒッヒッヒッ」

爺ちゃんが突然下品な笑いをこらえられない感じで、にんまりとした表情でそういったが、次の瞬間婆ちゃんのボディーブローにより悶絶していた。住職は困ったような顔で否定したが、俺にも爺ちゃんのいう意味は分かった。ようはここに女を連れ込んでエロいことをするのだ。

「ここは確かに人に見られたくない理由で造られた地下室だが、理由は廃仏棄釈(はいぶつきしゃく)の対策のためじゃ。」

「廃仏棄釈ですか。それってるろうに剣心で出てきた、あのお寺を排除しようという運動の」

「江戸の終わりや明治の初め、権力者の太子持ち共が、寺を目の敵にして、これを焼き払おうとしたことがあったのじゃ。仏教はインドから渡ったものであり、我が国の伝統宗教として、ふさわしくないとな。

まったくとんでもない話じゃ。聖徳太子の時代から仏教は国教と定められておる。それをそやつらは排除しようとしたのじゃ。日本には神道しかない、仏教など邪教にすぎないといわけじゃ。

しかしこれは全て口実にすぎん。実際は暴れる理由がほしかっただけ。もしくは政治的な権力闘争に過ぎない。文化・伝統を声高に語る人間ほど、それへの理解などまるでないという良い例じゃ。

それでその対策として、こういう地下室に貴重な文化財を隠すことにしたのじゃ。もっとも実をいうと、この地下室は今では人が暮らせるように改装してある。もう何も隠す必要がないのでの。一人でいたい若い坊主たちが、ゲームなんぞをする部屋として使っているのじゃ。まあついて参られよ」

そういって、懐中電灯を懐から取り出して、入り口を開いた。そこから先は地下への階段が続いていた。懐中電灯でてらされていたし、昼間なので手前は暗くはないが、奥までは光が届かずその先の暗闇が俺をさそっているかのように感じられた。

それに誰かが石を上からのせたら、地下の人間は出ることが出来ないなとも思った。若い坊さんがゲームをする部屋だと言われたにもかかわらず、やたらと不気味に思い、正直な印象として「なんかあの世とかに繋がってそうですね」とつぶやいた。

住職は下に続く階段を降り始め、俺達も後に続くことにした。住職は階段を降りながら話を続けた。

「お前さんは、あの世とこの階段を結びつけなさったな」
「なんか予想外だったのでつい口を滑らせました。失礼だったらすいません」
「いやわしもそう連想しましたわい、なんせあの世にいくのが近いものですからなあ」
爺ちゃんも意味深に相槌をうった。

「仏教では悟りという目標があるのは知っておろう?この世の物には一切執着せずに、自分さえもない境地じゃ。この世の苦痛はすべて執着によるもので、それをなくそうという考えじゃ」
「それとあの世と関係あるんですか?」
「少なくとも爺さんには無理だねえ」

ただでさえ不気味な階段で、自分がないとか、世界はないとか、そういう話がはじまったので、困惑し、少し反感も抱いた。俺はそういう風には感じていないし、思いたくもない。爺ちゃんや婆ちゃんや住職もこうして存在しているじゃないかと。でもそういう思いはあえて飲み込んだ。藪蛇で長話になるのを恐れたからだ。

「この世を迷妄の世界と捉えれば、そこに執着してはいけないと考えれば、人はすぐにでもこの世を離れなければならぬ。自分に執着しないために死なねばならぬ。時宗系統の考え方ではそうなる」
「話が良く見えないが住職様、孫の言うように、それとあの世とどのような関係があるんですかな?」爺ちゃんが割と真剣に問いただし、それに合わせて住職もやや丁寧な口調でそれに答えた。

「あの世とか浄土とかあるいは地獄とか、そういうものは、上とか下にあると我々は考える傾向にありますでな。しかしもう一つ、横跳(おうちょう)という考え方があるのですじゃ。浄土に行くには、横に跳ぶべきだというのですじゃ。人間としての生活を全うして、普通の人がやるようなことはすべてやって、人生の苦痛を積極的に受け入れることで、浄土への道が開けるという考え方ですじゃ」
「いやあわしにはその方が向いているようですな。いやさすが住職様よいことを教えてくれた」爺ちゃんは上機嫌だった。

こんな話を、階段を降りながらしたわけだが、階段は思ったほどには長いものではなく、降りたところに狭い通路とその先にさらに鉄扉があった。
住職は話をきるとそれを開け、そして右手の方をてさぐりでさわると、その部屋は明るく照らされた。電気が通っていてスイッチを押したのだった。

その部屋は、文化財の保存とは名ばかりで、普通に生活できるような部屋だった。テレビがあり、本棚には漫画がぎっしり詰め込まれ、畳が張られ、壁も土や鉄製ではなく、壁紙がはられ机もあった。あとで確認したところ、なんとトイレも水洗だった。

広さ的には10畳ほどかな、家具類は手前におかれ、奥のスペースには、何か仏教関係のものが乱雑に積み重ねられていた。一言で言うと、奥の方は小学生が5分でかたしたようなありさまだった。

「ここは、普通の部屋じゃないですか。少なくとも手前は」
「そうじゃ。修業中の頃のわしの息子や、若い僧侶が遊ぶための部屋じゃからな。もっと言えばわしの個人的な趣味でこうした部屋を作ったのじゃ。地下にこんな部屋があれば面白かろうとな」

「でもさっき文化がどうだとか、それを乱雑に放置していいんですか?」
「部屋を整理するときに、金目のものは売り払い、面倒くさいからガラクタだけを放置してあるのじゃ」

この返答におもわず俺は呆れた目で住職を眺めてしまった。とんだ俗物か、よほど悟った人間でないとこういう態度はとれない。これが彼の言う横跳だとでもいうのか。すると住職は悪びれもせず、語りだした。

「伝統とは物ではない。それは人じゃ。寺がなくても僧侶がいればそれでいいのじゃ。どんな立派な伝統的外観があっても、そこに住む人々が日本の心を継承していなければ意味がないのじゃ。しかし逆は可なり。西洋的な住居に住んでいても、心が日本人ならばいいのじゃ。伝統とはまずは人なのじゃ。

例えば芭蕉の句を見よ。『古池や蛙飛び込む池の音』
ここには余計なひけらかしがない。自らを飾ろうとする気取りがない。

千利休の茶道を見よ。たしかにわびさびには、格式ばった所がある。しかし利休は、あの金ぴか悪趣味の太閤秀吉に反抗して、自分を貫きその結果切腹して果てたのじゃ。それは物ではない、心じゃ。日本人としての心の構えこそが大切なのじゃ。

日本文化は、自然を支配する西洋文明とは違う。もちろん人間のやることだから作為はある。芭蕉も金を伸ばすように、芸術を鍛錬せよといっている。しかしそれは絢爛に目を奪われないためなのじゃ。

伝統文化とはそういうものじゃ。攘夷だ、維新だ、文明開化だ、便利なおまじないを次々に着替えては、古きものを破壊し、西洋にかぶれ跪き、無意識的にアジアを見下し、自国の文化を顧みない愚か者共。

そうした和の心がない連中が、ご都合主義に他者を悪に仕立て上げるために、愛国者だの伝統だのと叫ぶ。本当はただ自分の野蛮さ弱さを認めたくなくて、そのくせ実は公然と暴力をふるう機会を舌なめずりしながらうかがっているのじゃ。そして機会がくると途端に我こそ官軍だといって暴れ出す。そういう連中に日本も外国もない。まったく仏の道とは程遠いものじゃ。

住職はなにやらわけのわからないことをまくしたて始めた(それまでもそうだと言えばそうだが、何かヒートアップしていたし、理系の俺には江戸時代の話とか、伝統とか言われてもピンとこない。つまり再現するのが大変だったし、本当はもっと長い、あまり政治的な話はよくないと思う。そして先にというか今更書くけども、住職の話は大概こんな感じで、この短い期間にいやというほど繰り返された)。

そして長話しが終わると、とにかく一日部屋に鍵をかけてこもり、誰が来ても絶対にあけてはならないと言い残してさっていった。
爺ちゃん婆ちゃんも後に続いたが、二人は俺のために事前に食料を用意してくれていて、それを渡してくれた。お菓子やおにぎり等だった。一応部屋にもとからお菓子が置いてあるみたいだったが、最近雨が多く、しけっているので、あまり食べない方がいいとのことだった。

三人が出て行ってから、俺はまずテレビを見ることにした。しかし電波は通ってないようで、砂嵐しか映らない。ということはDVDがあるのだと周囲を探してみたが、テレビ台の下にタイタニックとラストサムライが置いてあるだけだった。俺はエロいものが隠してあるという期待を捨ててはいなかったので、拍子抜けだった。

俺は仕方がなく寝転ろんで、漫画を読みながら片手でスナック菓子をバリバリ食い始めた。この時点で午後の3時ごろだった。

それから漫画に飽きるまでそうしていたが、ふと時計をみるともう5時だった。俺は考えないようにしようとは思いつつ、一人きりになってしまったせいか、忘れようとしていた彼女のことをつい思い出してしまった。

俺はこの旅行でこれが一番怖かったのだが、どうやら逃れられない様だった。漫画を手に取ったときから俺はこのことを考えないようにと無意識的に思っていたはずだ。
関係ない人には申し訳ないが、失恋というのは、とてつもなく辛いのだ。抑え込もうとしても内心はグチャグチャだった。

それにこの時俺は、少し前に住職が何を言おうとしていたのか、それも考えていた。住職が言っていた文化だの伝統だのと言う話、悟りだとかの話は、俺には何のことか、あの時はまったくわからなかったし、これを書いている今も正直よくわからない。理系の人間で、西洋文明の中で生きているのだから。ただ今から思うと、悟りや浄土の話に関して限り、彼は都会から来た俺に何かを感じて、慰めてくれようとした部分があったのかもと思える。

だがこの時はそんなことは思いつかなかったし、住職が何を意図してそんなことを俺にいったのか。それがわからないということに、俺はこの時はじめて不思議な感覚を抱き、引っかかっていた。

住職ならいいさ、でもはたして俺は、彼女の言いたいことを、心を本当にわかろうとしていたのだろうか。俺は彼女を何もわかっていなかったのかもしれない。はじめてそう思った気がしたんだ。辛い気持ちが後悔とまじって、体が震えて、崩れ落ちそうだった。もちろん、こんなのはよくわからない罪悪感で、たいして重要ではないのかもと思ったが、しかし考えずにはいられなかったんだ。

俺は自分が親切な良い人間だと、彼女にとって良い彼氏だと思っていた。しかしそれは俺の自己満足の、押しつけだったのではないか。人の心はどうしたらわかるのか。俺は本当にわかろうとしたのか。そう思いだすと、色々な出来事の光景が思い浮かび、涙があふれて目が曇った。俺が彼女に辛い思いをさせてきたんじゃないか、そうなのか? 俺は涙に身を任せて目をとじ、その場に大の字になった。逃げ出したかった。

―――――――

そのまま眠ってしまっていた。しばらくして目が覚めた時、時計を見るともう朝の6時だった。そんなに時間がたったかな、しかし旅の疲れもあるからなと、俺はけだるい心と体に無理をして弾みをつけるように起き上がると、丁度その時鉄扉の方から「朝じゃよ。もう大丈夫じゃ。鍵を開けてくれ」という住職の声が聞こえてきた。

俺はほっとしたが、次の瞬間猛烈な疑念にかられた。住職ならば鍵を持っているはずだし、それに爺ちゃんや婆ちゃんの声がしないのもおかしい。

「あの住職さん、爺ちゃんと婆ちゃんはいますか?あと俺は今寝起きで体がだるいので、住職さんが鍵をあけて入ってきてくれませんか?」

「いやそれが鍵を忘れてしまって。いまおぬしの爺様たちに取りに行ってもらっているのじゃ。まだ起きていないと思ったからな。しかし起きているのなら、そちらからあけてほしいんじゃ」

そう言われて、まあそうかと俺は納得した。別に言い分はおかしくない。そしてうかつにも鍵を開け、扉を開けてしまってから後悔した。鉄扉の上部についていた、覗き窓を開いて、外を確認してからでもよかったのに。

目の前には、元白装束らしきぼろ布ををきたぼさぼさの髪の長い女がうつむいて佇んでいた。顔は見えなかったが、俺は直感的に笑っていると感じた。

少しの間、俺は呆然として身動きができなかった。相手も動かない。しかし俺ははっとして、急いで扉を閉めようとした。その時になって女も動き、お互いにドアノブを奪いあった。女は部屋に入ろうとしドアノブを外側に引く、俺はなんとか締め出そうとドアノブを内側に引く。

女にしては異常に強い力だった。これでも身長180近く、理系とはいえ元々の運動神経は悪くない俺が力負けしていた。そして女はなにかいっていた。ぼそぼそと。いや聞こえたわけではない。それは頭に流れ込んできた。ひもじい、寒い、にくい、痛い、そんな感情だった、そうこの女が、いや女性はなんらかの形で不幸にあった犠牲者にちがいないのだ。それが呪神となっているのだ。おそらくそれは飢饉とか餓える事と関係あるのだ。俺はなんとなくそう確信していた。

俺はドアノブをはなし、背後のお菓子めがけて飛びのいた。ドアノブの一方の力がはずれたので、呪神様はバランスをくずして後ろにしりもちをついた。俺はその隙に適当にお菓子を掴み取り、反転して、そして呪神様に手渡した。

「これでゆるしてください。お供え物をたべた俺が馬鹿でした。俺がもっているお菓子は全部あげますから」

俺は心から謝れば相手が許してくれるとそう考えた。しかし同時に致命的なミスにも気が付いていた。だってそのお菓子は、爺ちゃん婆ちゃんがもってきてくれたお菓子ではなく、元々この部屋にあったお菓子、つまりしけっているか、最悪カビが生えているような、お菓子だったのだ。

呪神様は顔を上げた。その顔は露出した骸骨だった。でも眼球の穴の暗闇の中だけが、異様に光って、しかもその光は一つ、ではなかった。彼女はわらっていた。凄く嬉しそうだった。こちらも思わず笑い返してしまうぐらいに。そしてスナック菓子の袋を開けると、それを骸骨の手で一摘みほう張り、ばりばりと食べた。

俺は話が通じるのかと一瞬安心しかけたが、それは住職がいうように、浅はかな考えだった。呪神様は、夢中でお菓子を食べていたが、その顔はあくまで、俺のほうをむいて笑っていた。ただ笑ってお菓子をたべていた。それはまるでこのお菓子がおわったら、次は俺の番だとそういっているようだった。

俺はどうすればいいのかまるでわからなかった。ただ必死になんとなく思い浮かんだ念仏を唱えながら後ずさりをした。南無阿弥陀仏だとか南妙法蓮華経だとか、宗派だとかはまるでわからないが。同時に部屋の背後に仏教関係のガラクタがあることを思い出し、なにか助けにならないか、思い切って、呪神様から目を話して振り返った。

そしてその甲斐はあった。というよりも、さらなる驚愕を俺は感じた。例のガキが部屋の奥の方で笑いながらこちらをみて、しかも手までふっていた。俺はその瞬間このガキもこの世のものではないか、とにかく良いヤツではないことを確信した。ただし、それでも俺は彼に助けを求めるしかなかった。渾身のダッシュで、急いでガキの元に駆けよった。

「こんな所で何をやっているんだ。いやとにかく、何とかしてくれよ。せめて見てないで協力してくれ!」
「うーん、どうしようかなー」

少年は面白がるようにわらって呑気にそう答えた。しかし俺も真剣だったので食い下がり文句や合理的状況判断や世間的一般常識等をまくしたてた。
「しかたないなあ。じゃあガンダムのカードはなしでいいね。あともっとチョコレートちょうだいよ。あれうまかったんだよね」

もしかして・・・・全部お前が仕組んだんじゃ、カード惜しさとチョコレート目当てに。そう言いかけたがとっさに言葉を飲んで、すぐにポケットからチョコレートを取り出し、俺の尻の重圧でつぶれかけてはいたが、それを渡した。

少年はそれでも嬉しそうにそれを受け取り自分のポケットにしまった。
「しかたない。僕があの呪神を倒してあげよう」
そういうと、少年はつかつかと歩いて呪神のほうへと近づいた。俺はその時呪神様の表情をみた。呪神様は、憎悪の表情を浮かべていた。明確に俺と、いや少年に敵意を向けていた。そして少年が距離を詰めだすと、呪い神は急に先ほどとは違う感じで笑いだした。

「キャハハッハハハッハハ」狭い部屋中に哄笑が木霊して、呪神様は、今にも手ぐすねをひいて、少年に襲い掛かろうとしていた。

「うるさいなあ。君はもう消えていいよ」
少年が至近距離まで近づき、そして呪い神様は飛びかかった。少年の首に骨がむき出しの手がかかって、そして呪神様がその肩にかみつこうとしたその時、少年は呪神様の着物をつかみ、そしてそれをいきよい良く引っ張った。

呪神様が少年の首を抑えているにもかかわらず、着物は勢いよい良くその体からまるでマジックショーのようにはぎ取られた。少年が着物をつかんでひっぱっただけで、それは呪神様からはずれてしまったのだった。そして着物がはぎ取られた後には、呪い神様の体はなく、ただ首から上の骸骨だけが、空中で驚愕の表情をうかべ、そのまま床に落ちて、カロコロと転がった。

その転がった呪神の首を少年はサッカーでもするように追いかけて、その骸骨を何の躊躇もないように踏みつけると、それはまるでガラクタのように、もろく崩れさった。俺はその時呪神の顔は見えなかったが、なんとなくだが、無念な顔をしていたに違いないと思う。

だがそんなことは今だからかけることで、この時俺は呆然として、ただ傍観しているだけだった。そして少年が振り向くと、彼はあいかわらずの笑顔で、そして近づいてきた。俺はおもわず、後ずさりして、しかし後は壁なので、どうすることも出来なかった。彼が近づいてくるにつれて、俺の意識は遠のき、そのまま気を失ってしまった。

――――

どれくらい時間が過ぎたのか、俺は住職と爺ちゃん婆ちゃんに地下室で起こされた。時間を聞くと朝の7時とのことだったし、部屋の壁掛け時計でそうなっていた。
俺は色々なことをまくし立てようとしたが、しかしうまく話せなかった。のどがひりひりとまるで銀紙か、畳に生息するダニやノミでも大量に飲み込んだように痛い。

爺ちゃんと婆ちゃんはそんな俺をみて半狂乱になり、住職に詰め寄ろうとしたが、住職は、それを振り切り俺に「でたのか?」と言った。俺は頷きそして一言、「でも無事です」とそういった。すると不思議なことに俺の気持ちも、そして爺ちゃんたちの気持ちも、なんだか落ち着いたようになり、俺は皆に肩を貸してもらいながら、その部屋を出た。

俺はその後、若い坊さんの手伝いの元みそぎをさせられて、詳しい話は本堂で聞くと言われて、その前に少しの間寺の一室で休んだ。その後また若い坊さんに本堂に案内され、住職と話すことになった。

本堂では住職と二人きりだった。時間はお昼を過ぎていた。住職が二人だけで話をするようにあらかじめ決めておいたということで、爺ちゃん婆ちゃんにはあとで改めて話をするとのことだった。

俺はまず昨日というかこの日の深夜に起こった出来事を話した。自分でも意外なほど落ち着いて筋道をたてて話すことができた。それをきいて、住職はすごく難しい顔をしていた。とくに少年が現れてからの部分は意図的に何かを抑えているようだった。

俺の話がおわると、住職はなにもいわず、少しの間沈黙が流れた。間が持たないのもあったし、俺は率直に昨日聞けなかった呪神様の由来について聞いた。住職もそれを了解して長い話が始まった。

「呪紙様は飢饉のときに、人柱にされた女性が物の怪と化した者じゃ。わしはこの寺を受けついだ時に寺や郷土資料館の古い資料を読み漁ったのでそれを元に語るが、江戸の昔この地域も飢饉に見舞われ大量に人が死んだことがあった。日照りで作物は取れず、まずは村周辺の犬を食い、次には山の獣や草木を食い、食い荒らした結果、しまいには親兄弟で殺し合った。

ある女は生まれたばかりの自分の赤子を食い、ある男は自分の両親を殺して解体し、その肉を売り歩いた。」

ここまで言うと住職は、言葉を斬り、俺をじっと見つめた。それは明らかに話の続きを聞く気があるかという確認の合図だった。俺はだまって首を縦に振った。だってそれは俺も幻想としてだが一部体験したのだ。

というより俺はこの時、自分があの地獄の一部を見たのに、その苦痛をそれまであまり気にしていないで、主に他の事ばかり考えていたことを初めて意識した。それは自分の心を守るための一種の現実逃避だったのかもしれない。しかしそれだけではなく、失恋の後悔が強く、彼女をきずつけてしまったのかと後悔したこと、それに爺ちゃん婆ちゃんがそばにいてくれて俺を助けてくれていることが大きかった。この時、人と人との関係を大切にしなければいけないと思って、自分を強く持とうと思ったんだ。

住職は話を続けた。
「地獄とはこのことかもしれん。その時村に一人の若い修験者が訪れた。これは僧侶とは違う体系の元に修業を積んだ人だが、彼は村の惨状を知っており、それを助けようとしてやってきたのだ。

山の幸も食べつくされたと言ったが、実際には、山には山の民が住んでいた。食料の奪い合いは、個人間でも共同体の中でも激しくなっていた。そしてその中でも弱い共同体、弱い個人が一番被害にあう。だれもが自分だけ助かろうとしてかえって愚かな事をする。修験者は人々に争わないで、協力することをとこうとしたが、それは非現実的だと受け入れられず、焼かれて食われてしまった。

修験者はいまわの際に、人柱を立てれば雨が降るとそう言い残して死んでいった。それは死に際の呪詛なのか、それとも本心からなのかは今となってはわからない。

・・・・はずかしいことだが、こうした飢饉のとき寺や僧侶の力には限界があった。寺は色々な共同体の精神的・権威的よりどころとして、勢力をもっていたが、そのせいで返って、餓えている人々を贔屓してかばうことが出来なくなっていた。色々な所に気を使い、そして自身が保身にはしったということじゃ。もちろん最低限のことはしていたはずじゃが」

住職は最後にとってつけたように弁解をさしはさんだ。俺はそんなことはどうでもよく、ただ人柱ときいて、女性が生贄にされたのだと、そのことが気がかりだった。
「それで、もしかして、本当に人柱で生贄をささげたんですか?どうしてそんな馬鹿な事を。そんなことで雨が降る訳がないのに」
「それは現代人の考えじゃよ。これは人間の力ではどうにもならない事の原因が神や魑魅魍魎の仕業だと考えられた時代の話じゃ。そして不思議なことに雨は降ったのじゃ。それからしばらくして、天候は良くなり、餓死者は少しずつだが減って行った」

「まさか・・・・でもそれは偶然だ。第一もしそれが何か得体のしれない神や幽霊の法則であって、生贄が正しかったとしても、そんな法則も正義もおかしいですよ」
「まあその話は置いておこう。続きじゃが、雨が降りその後飢饉が収まって行ったのはよかったのだが、同時に少しずつ神隠しが多くなったのじゃ。村では女の霊が度々目撃されるようになった。単刀直入に言えば、その生贄以来女の霊が化けて出るようになったのじゃ。それが呪神様の正体じゃ。

ただもともと人口が少なくなっていた村が全滅しなかったのは幸いであった。先に話した通り当時ここら一帯には、複数の共同体が存在した。この寺はその境目にあるのだが、
女の霊つまり呪神様も、複数の共同体に出没し、そのために少なくとも一つの村が消滅するということはなかった。

人々は自らまいた呪いに恐怖して、呪神様の生贄がおこなわれた時期に毎年、お供え物を沢山捧げて、供養をすることにしたのじゃ。そのお供え物のコメをお前さんが食べたというわけじゃ。それは呪神様にとってはもっとも許せないことなはずじゃ。まだ呪いは消えていないのじゃ。以上が事の真相じゃ」

住職はここでまた一旦話をきり目をつぶった。俺は大体予想していた話だったので、大方納得しかけたが、しかしすぐに、まだ色々とわからないことがあることに気が付いた。一番はあの少年のこと。あとは共同体がいっぱいあって云々みたいなのが、何かぼかされているようで不自然な気がした。住職は再び沈黙していたが、俺は思い切って、それらの疑問をぶつけてみた。

「よくわかりません。どうして呪神様は自分を生贄にした村だけに出ずに、他の共同体にも化けて出たんですか?それにあの少年は何者なんですか?」

しばらくの沈黙のうちに住職は、「足がしびれた」といって座り直し、そして下を向き溜息をついた。そして顔を上げると、その瞳孔は開き、もう何もかも話してしまおうという顔になっていた。それはまるで重い腰を上げるという表現にぴったりだった。

「ここら一帯は、昔はある藩と藩のちょうど境目だったそうじゃ。藩というのは今の県ぐらいの大きさじゃが、それぞれに殿様がいて、それ自体が一つの国であった。寺が立っている山がちょうど二つの境目だったのじゃ。そして山のふもとにはそれぞれ集落があった。そのほかにも、山の中に猟師や代々山に住み着いた人々、またはもろもろの理由で人里にいられない人達の共同体があった。

もちろん藩の境目だから関所はある。しかし藩という区切りとは別に、寺という区切り、村同士という区切り、山と村という区切り、色々な共同体の関係があったのじゃ。そしてそれら全ての人がこの飢饉にはかかわっていた。だから呪神様がどこに出てもおかしくはない。

よく江戸時代について勘違いされることじゃが、身分制度が厳しく、人々が土地に縛りつけられて、ロシアの農奴のような存在だったというものがある。しかし江戸時代は長い。初期の技術が未熟な時代ならまた別じゃが、中期以降は農業や手工業での生産力が向上した結果、侍と農民と商人、そして被差別階級の力関係はかなり違ったものとなった。人々は我々が思うより自由に移動していた。土地も身分も。

しかし同時に、我々が考えなければいけないことは。当時にはやはり人権意識もなければ、庶民には、満足な食事も医療体制も手が届かなかったということじゃ。つまり今よりもはるかに人々は粗雑な扱いを受けていた。障害者は見世物小屋に売られて、前世の因縁・自業自得だと、人々の嘲笑の的にされていたし、娘は女郎屋に売られて、それを売った金で田んぼが増えたと親が自慢し、男子も二男以降はごくつぶしと言われたりした。

そんななかで、人々の心のよりどころは、共同体の掟とそして藩じゃった。藩は一つの『国』だった。今の日本という国を千古万来より受け継がれてきたものだと考える人がいる。それは半分正しい。確かに水戸光圀初め、日本という国をこの島を意識していた人々はいた。秀吉も日本という単位を考えていたから、外国を支配しよう考えた。日本というまとまりはあった。

だが一般の庶民はどうか。彼らにとっては自分達の住む藩が国であった。ある意味では他の藩は外国であった。戦国時代を思い出してほしい。他の領土を戦争でぶんどったあとは、そこの領民を奴隷にして海外に売りとばして、戦に必要な物資を補充していたのじゃ。そして江戸時代は、徳川支配の元、それが権力や産業により行われるようになった。

昔の日本は藩という小国の連合国家であり、徳川はその封建体制の盟主であった。今の我々が思う国民の感情と国の体制が一致している国民国家というのは、近代になって生まれたもので、これは封建制度のもとではありえない。封建制度のもと産業や文化が成熟してはじめて成立するものじゃ。つまり日本という国が統一的な連綿とした存在であるというのは半分は嘘じゃ。

ところでこれは前置きじゃ。本当にここで言いたいことは、国だろうがなんだろうが、人は一つの共同体のみで暮らしているわけではない。つまり二つの藩の境界入り乱れる共同体の間を、人々は様々に精神的、地理的に移動していた。藩同士のいさかいや関所があってもそれはある程度有名無実だったわけじゃ。これは逆説的に思うかもしれぬが、海で囲まれて逃げられない土地というわけでもないのじゃから。

わかりにくいのであればこういう例を出そう。ある小学生が自分のクラスに溶け込めないために、休み時間に他のクラスに遊びに行く。これも二つの共同体じゃ。あるサラリーマンが家では妻の尻に敷かれ子供に馬鹿にされていても、会社では有能で、大人の付き合いではねっからの遊び人だったりする。子どもは親の元に属しており親を信頼するが、外の世界では独自の自由さを持っている。人は一つの世界に住むわけではなく、複数の世界に住む。世界が変わればその人も変わる。輪廻する魂以外はその様に変化する。魂を思わぬものは、人の外皮をみて、自業自得と、その魂までも判断しようとする。餓えて死んだ人は自業自得で死んだのではない。

このような共同体がある中で、飢饉が起こるとどうなるか?
それは表面的な協力からむき出しの争いに代わってしまう。横の争いと縦の争いじゃ。共同体同士で資源を奪い合い、そしてその中でも権力をくしして弱いものから搾取をする。しかしそのような共同体同士の関係というのはある意味では見えにくい、なぜなら人々が複数の共同体に属しているからだ。みなが国民国家のように、一つの共同体に属していると思っていれば、真実はどうあれ、それは一見わかりやすい。しかし現実にはそういうわかりやすさはなく、よきにつけあしきにつけ人々の関係は混沌としている。混沌としたものが、良いときには優しさや自由につながるが、悪いときには定見のない骨肉の争いを産みだす。

ただし、二つの代表的な共同体、山を挟んだ二つの村には明確な力関係があった。君の爺様達の住む仮にA村が属する藩より、隣のB村が属する藩のほうがより財力や力をもっており、年貢も低く、それだけは人々の共通の認識だった。」

「待ってください、歴史の話ばかりでそれがどうして呪いの話に繋がるんですか。言いたいことはなんとなくわかりますが、あまりに回りくどいというか、矛盾している個所も多いというか」

俺はつい口をはさんだ。そりゃあそうだこの住職は、一度話しはじめたら話が長く、それに何をいっているのか、何を言いたいのかもさっぱりわからなかった。それに話も動作も同じことの繰り返しのような気がしてだんだんイライラしてきていた。しかし後から振り返るとここが核心で、ここにきて住職はやっと本心を切り出した。

「飢餓はなぜ起こるかしっておるか?」
「いやそれは日照りで作物が取れないからでしょう。食べ物がなくなって。それでみんなにいきわたらないということで。それは先に話したばかりじゃないですか。」
「それは飢饉と飢餓を混同しておる。飢饉は天候不良等で作物の収穫高が少なくなること。飢餓はただ餓える事じゃ。」
「いやそれがどうしたんですか。結局食べ物が少なくなり、人にいきわたらないんでしょう。たぶん備蓄している米とかはあるにしても、全員にはいきわたらないから、立場が弱い人から餓えるということでしょう」
「では実は飢饉のときも、皆にいきわたる程度の作物の収穫と貯えがあったとしたらどうする。それはかならずしも飢饉のための飢餓とは言えない。」
「いやそんなことがあるんですか・・・・?」

「当時の記録によれば、この地域一帯で大幅に収穫は減少したものの、人々が上手く食べ物を分配すればなんとか最小限の死者数ですませるくらいの食べ物はあったのじゃ。

もちろん、作物の不足という面はあった。藩が見かけの石高にこだわり、農民に他の飢饉に強い穀物よりも米を主に生産するように指導していたことが裏目に出た。かといって藩が備蓄米を領民にわけあたえることなどしない・・・・

しかし、これは御上のやる事じゃ。人々はある意味では恨まない。初めから逆らおうなどとは思わない。しかしもし親密にしていた隣の村同士だったらどうする?貧しいA村では食料がよりすくなかった。相対的に見ればB村にはより多くの食料があった。しかし、今まで良好な関係を築いてきたにもかかわらず、B村はA村を助けず、その結果呪神様はA村で生まれた。」

「いやでも、さすがにB村の人も苦しんでいるのに、俺達のA村に米を分けろというのは、無理強いは出来ませんよ。それは逆恨み臭いですよ」

「B村がA村に備蓄作物を分け与えなかったというのは正確ではない。A村も少ない貯えからそれを金銭で買おうとしたのじゃ。ただでもらおうとしたのではない。

もしB村が自分たちのことを優先して備蓄作物をA村に売らないというのであれば、別にA村の人々も、呪いなどしなかったであろう。このときA村の人々も、B村の貧しい人々も、自分たちの明日の命運が、どうなるか気が気ではなかったはずで、B村の地主の判断を仰ぎ助けを求めた。今までの付き合いからB村の地主が食料を売ってくれるか、交換してくれるとそれに期待した。

しかしB村の地主の判断はまったく予想外の物じゃった。彼は備蓄していた作物を、もっと遠いもっと困っている村の人々に売りに出すといったのじゃ。

それをやられたら両村の貧しい人間、特にA村の人々は死ぬしかない。しかし地主はよりひどい飢饉で困っている人々を助けるため、そしてそれにより得た収入で最終的には両村を潤すために、それを敢行した。

つまり、より食べ物がない地域に食べ物を売りに行けばより高い値段がつくのじゃ。それをあとで村の足しにしようということじゃ。そして両村の貧しい人々が死んだ」

あいかわらず住職は同じようなことを二度言った。あまり俺の理解力は信頼されていないのかとむっとしたが、それはそうとして、俺は少し地主の意見にも理があるのではと思った。

「でも地主のおかげで他のもっと飢饉がひどい地域の人がたすかったんでしょう。だったら人々が恨むのはわかるけど、救われた人もいたはずですよ。それに長期的にみれば、村にもプラスになったはずです。」
「そうじゃな。その儲けがその後どう使われたかまでは資料にはかいておらぬで、詳細はわからぬ。しかし肝心なのは、飢饉での死因は、作物がまったくないからというほかに、それを買えない、なんらかの交換手段をもたない貧しき人々、小作人、使用人、職人、芸人、そういった人達が、犠牲になるという側面があるということじゃ。食料があったのに、うってもらえなかった、交換してもらえなかった、彼らはそれを怨み人柱を立てた。だから、呪い神様は二つの村にも山にもでる。そしてその背後には、もしかしたら、お前さんが見た例の少年が関係しているのかもしれない。

彼のことは弁尖上、氏神様と読んでおく。氏神というのはそれぞれの地域に存在する郷土神だが、この地域には昔からそういう神は少なくとも公式的には存在しない。しかし寺の資料、地下室に眠っていたものの中には、数か所その記録があったのじゃ。

例のB村の地主だが、彼が作物を遠くに売りに出すのを決めたのは、夢の中で氏神様となのる少年がそれを示唆したからだという。曖昧な記述で正確にはわからないのだが、現代的に意訳すると、少年は次のようなことをいったらしい。

『天帝は非道である。慈悲深いふりをして幾度も人を殺したし、これからも殺す。しかし氏神は人間の味方である。人間が神仏から儲けを出すことを許す。神仏を加工し、使用に耐えるようにすることが、自らの利益を最大化することが、人間の使命であると共にせめてもの抵抗である。さすれば犠牲は最小限になり、幸福は最大となるであろう』

当時の日本人にこのようなこのような考えができるはずもないが、地主がこのようなことを自分で考えたのか、本当に夢のお告げなのかはわからない。というよりも、本当に一連の決定を地主がしたのかも、そんな村同士のやり取りがあったのかも、実は大いに怪しい。わしがみた資料にはおかしなところ、取ってつけたようなところが多くあった。

しかし複数の資料を調べた結果、飢饉があり、女性の生贄があったのは本当だった。これで話はおわり、本当のところはわしにもわからん。あまり気に病みなさるなよ」

そういって住職はあいかわらず、目を閉じてうつむきだまった。何度目だろうか。
俺は言葉がでなかった。氏神があの少年なのかはわからないが、しかしいたずらそうな彼の顔がなんとなく重なって、すごく肌寒いものを感じた。彼が氏神様で、あの呪神様や村人を切り捨てるようにいった張本人なのか・・・急に虫の声がきになり、外で泣いている蝉がまるで悲鳴を上げているようにも思えた。外を見るともう4時ごろになっているらしいことに気が付いた。日が陰り始めていた。2時間以上も住職と話していたことになる。

これは今思うことで、当時はわからなかったが、自然を支配するというのは、現代人が普通にしていることで、別に氏神の考えだって、当たり前のことなのだ。もし人間が自然を加工しなければ、洪水や疫病で大惨事になる。飢饉もそれがたりなかったからおこったのだ。だから氏神の言うことは正しい。全部悪だとは思えない。でも完全無欠な正義かと言われたら少し、いやすごく違和感がある。

俺は色々な気持ちに浸りながら、この時はただ飢饉や歴史の中で犠牲になった人々にたいして黙とうすることしかできなかった。住職も目の前でそうしているように感じだ。俺達は祈りをささげた。そしてこの時にはじめて、「住職の由来をしってもそれだけでは意味がない」という言葉の意図が少しわかったような気がした。

しかしまだ住職の話はおわっていないと俺は思った。何度目だろうか、俺は再び住職のほうをみると、彼もこちらを見ていた。そして俺が何も言わないうちから、こういった。

「地主に備蓄作物を売るように指導したのは藩じゃよ。人にやられて嫌だったことは、自分がやったのだと反転して考えれば苦痛は少ないからの。この二つの藩は共謀して、自分たちのたくわえを、領民にくばるのではなく、金儲けに使った。侍たちは金が大好きだったんじゃ。だから領民たちにもせいぜいあらそってもらう必要があった。飢饉は金儲けにも口減らしにも好都合だった。侍のおかげで農民がいるのであって、逆ではないというのが彼らの理屈じゃ。変わりはいくらでもいるとな」

俺はもうショックにも感じなかった。そして案外に落ち着いて質問した。

「それは嘘ですよ・・・でも、今までの話は本当なんですよね・・・・?」
「人間の語る事、どこからどこまで本当かどうか、君が見た呪神も氏神も君の気の迷いや感受性からくる存在やもしれぬし、実のところ、わしには説明のつけようがない」

最終的になげやりな感じで、住職の話は終わった。
――――

本当はここで終わればよかったのかもしれないが、実は蛇足がある。いやもうどこまでが蛇足でどこからがそうでないかもわからない。一連の話にはいまいちまとまりがないからね。ここからは、書こうかは迷ったんだが、どの道もう気持ちのいい話ではないし、これがこの事件の結末のように思えるから書いてしまう。

俺達二人はその後少しの間黙とうを続けた。そして黙とうをしていると、いきなり何かが崩れ落ちるような轟音がした。俺は驚き目を開けると、よこで住職が「ついにやったか!」と驚いた顔で叫んだ。そして彼はいきなり、走り出した。俺は引き留めてわけを聞こうとしたが、彼は「きちゃいかん、じっとしていなされ!よいか絶対にきちゃいかんぞ!」そう後ろを振り返り一喝すると凄い速度で廊下をはしっていった。

しかし俺はきになった。その時ちょうど爺ちゃんと婆ちゃん、あとは若い坊さんも音に驚いて、本堂にはいってきた。俺を心配してくれたんだ。俺は事情を話し、とりあえず皆で住職を探すことにした。

俺達は手分けをして探し、どうやら彼は庫裏、つまり寺直通の住居部分にいることがわかった。そこから物音や声がしたからだ。いつの間にか、若い坊さんもいなくなっていたが、俺と爺ちゃんと婆ちゃんは、まだ呪いが終わっていないのかと、そこに駆け付けた。
玄関をあけて、二階建ての庫裏の一階部分に入り、物音がする部屋に向かうと、そこでは凄惨な光景が繰り広げられていた。その部屋は6畳ほどの部屋で、普段は普通に住居スペースだとは思うが、その時はもう何に使われていた部屋なのか、わからなくなっていた。

あたり一面に、割れた酒の瓶とエロ関係のもの(DVD等)、あとはよくわからない骨董品やらガラクタやらが山詰みになり、床は割れた酒により水浸し、そして女の裸体の写真が散乱し、それは多すぎて毒々しいまでに俺達の視界を覆い、一言で言うならば何もかもが、崩壊していた。

住職と若い坊さんは、その間を右往左往していた。住職は日本酒のビンを片腕に抱え、左腕でDVDを回収していた。若い坊さんは、割れた酒瓶のうち、まだ飲めるものを大事そうに口が斬れるのも無視して、一心不乱に飲んでいた。またはじの方にもう一人今までみなかった中年の坊さんがいて、その人は、割れた壺をてにとり硬直していた。

これは一体なんなんだと俺は思考停止したが、婆ちゃんが、天上を指さして、俺もそちら見ると、さらに絶句した。

そこには天上がなかった。正確には二階の天井が見えていた。つまり二階の床が抜けて、そこにあったものが、一階に落ちてきたということだ。たぶん二階に色々な物を積み過ぎたんだ。俺は大体の事をこの時予想し理解した。

俺は再び目の前や足元に視線をもどして住職さんたちを見た。
「住職さんこれは一体なんですか?」
俺は偽善者ではないからいうが、俺もエロDVDやエロ本をもっている。だから男の気持ちはわかる。しかしこの時は少しなじるような感じで住職を責めた。なんとなくだが少し裏切られた気がしたからだ。住職は芭蕉や利休の話でも文化がどうとかいっていたが、あれはなんだったのか。大体住職はとっくに俺達に気が付いているのに、あえて忙しそうにすることで、ごまかしているのは明らかだった。

俺に呼びかけられた住職は、体は俺に平行なまま、ぎこちなく顔だけを俺のほうに向けて、少し恥ずかしそうな顔をした。俺はさらに追い打ちをかけた。
「芭蕉とか利休とか自然な芸術の日本精神はどうしたんですか?」
すると住職は答えた。
「そんな無理に上品ぶったものなど本当は好かんわい。そんな精神的貴族様の御芸術よりも、わしは黄金の茶室が好きでの・・・・・・ようするに、これが本当の日本精神じゃわい」
住職はそういってから、その場に跪きエロDVDやそのたエロ関係のグッズを体に抱き寄せて頬ずりをして、その後それらを拝んだ。

俺はなんと返したらいいかわからなかった。後ろでは爺ちゃんが「ヒッヒッヒッ」と下品な笑い声を上げ、婆ちゃんの怒号と張り手が飛んでいるようだった。俺は帰ったら彼女との関係を見直して、なにか声をかけようと心に決めた。

さらなる後日談として、結局彼女とは復縁できなかった。しかし、お互いに付き合ってきたときの嬉しい思い出や後悔や色々な気持ちを、振り返って、理解し合おうとしたことにより、それぞれの形で成長することが出来たのだと思う。これで俺の話は終わりです。

 

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